遠隔操作ロボットは、機能性の高さからさまざまな業界で活用されています。本記事を読んでいる方のなかには、機能性やデメリットが不安で導入を悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
今回は、遠隔操作ロボットの概要や市場、おすすめのロボットメーカーについてわかりやすく解説します。また本記事を通じて、遠隔操作ロボット導入のメリット・デメリットを理解でき、多角的な視点での導入判断ができるでしょう。
目次
遠隔操作ロボットとは?
遠隔操作ロボットとは、遠距離から自由に操縦可能なロボットのことです。
遠隔操作ロボットは、人材が不足している工場や人助けが必要になる災害現場など、あらゆる場面で役立つロボットとして注目を集めています。
遠隔操作ロボットの歴史
遠隔操作ロボットの歴史は、1947年にアメリカ・アルゴンヌ国際研究所でロボットアームが開発されたのがきっかけで始まります。
そして1950年代には、電気の力でロボットを操縦できるシステムが開発され、動作範囲が拡大して宇宙や建設現場などさまざまな分野に遠隔操作ロボットが応用され始めました。
1990年代にはインターネット技術が急発展し、通信インフラにロボットを接続して遠隔から操作できるようになりました。
遠隔操作ロボットの上がり続ける市場
ここでは、遠隔操作ロボットの市場を解説します。
市場動向と遠隔操作ロボットの期待
まずは市場動向と遠隔操作ロボットの期待を解説します。
遠隔操作ロボットの市場規模と成長予測
世界の遠隔操作ロボットの市場規模は、2023までに3.12億米ドル(約437億円)に達すると予測されています。
参考Telepresence Robot Market /RESEARCH AND MARKETS
また、遠隔操作ロボットの2018年から2023年の年平均成長率は年間16.5%と予測されています。そのため、遠隔操作ロボットは今後もさまざまな市場へ参入を進めていくでしょう。
高度な遠隔操作への期待とその実現の可能性
近年、日本で対策が急務となっている「高齢者の支援」に対して、高度な遠隔操作ロボットの1つである「アバターロボット」の活用が期待されています。
アバターロボットとは、VRゴーグルや多指ハンドを通じて、人間が現地に存在しているかのような感覚で直感的な作業を可能とする遠隔操作ロボットのことです。
現時点でアバターロボットは、ペットボトルからコップへ水を注いだり、複数重なっているプラスチックのカップを1つだけ取ったり動作など、実用に向けて実証実験が進められています。
アバターロボットの社会導入に向けて、本田技研工業等のさまざまな企業で実証実験が急速に進められているため、将来的には高齢者支援サービスの実現も十分可能でしょう。
通信技術の進化と遠隔操作ロボットの可能性
近年、通信技術が進化してきたため、遠隔操作ロボットをよりスムーズに導入しやすくなりました。ここでは、通信技術の発展が、どのように遠隔操作ロボットへ影響を与えるのかを解説していきます。
ローカル5Gとその遠隔操作ロボットへの影響
ローカル5Gが工場等に本格導入されると、遠隔操作ロボットに対して大きな影響を与えるでしょう。ローカル5Gとは、大容量のデータを高速通信できるシステムです。遠隔操作ロボットにローカル5Gを活用することで、以下のような効果が期待されます。
- 同時に複数の遠隔操作ロボットを遅延なく使えるようになる
- 外部電波の影響で通信が遮断されることなくロボットを遠隔操作できる
ローカル5Gを導入すれば、通信範囲が広くなるため大容量の通信でも同時に接続可能となり、遠隔操作ロボットをよりスムーズに操作できるようになります。
遠隔操作ロボットの活用のメリット・デメリット
ここでは、遠隔操作ロボットの活用のメリット・デメリットを解説します。遠隔操作ロボットを導入する際に適切に判断をするためにも、それぞれチェックしておきましょう。
メリット
まずは、遠隔操作ロボットを活用するメリットを3つ解説します。
技術者不足問題の解決に向けた活用
遠隔操作ロボットのなかには、1人の技術者で複数のロボットを操縦できるものがあります。そのため、作業員をロボットで補えるようになるため、技術者不足の解消につながるメリットがあります。
地方にある工場への視察
遠隔操作ロボットは、地方にある工場の視察にも活用できます。なぜなら、遠く離れた場所からでも操縦できるようになりつつあるからです。
事実、リモートロボティクスでは、2023年夏に自宅からロボットを操縦できるシステムを実用化するシステムを発表しています。遠隔操作ロボットを活用すれば、地方への移動の必要がなくなり、効率的に視察ができるようになるメリットがあります。
災害時など人が立ち入れない場所での活用
遠隔操作ロボットを活用すれば、災害時に人が立ち入れない場所でも活用可能です。
例えば東北大学が開発した「Quince」は、東日本大震災にて半壊した建物の屋内を撮影して放射能のレベルを測定し、炉心の冷却に大きな貢献をしています。遠隔操作ロボットを活用すれば、災害時等の危険な場所でも安全に作業を進められるメリットがあります。
デメリット
遠隔操作ロボットを活用するデメリットを3つ解説します。メリットに続き、遠隔操作ロボットのデメリットもしっかりとチェックしておきましょう。
導入コストがかかる
遠隔操作ロボットを活用すれば、導入コストがかかります。遠隔操作ロボットを導入するためにかかる費用の例としては、以下の通りです。
- ロボット・ロボットハンド代
- メンテナンス・コンサル費用
- 研修費
ただし遠隔操作ロボットを導入すれば、大幅な生産性向上や人件費の削減につながるため、長期的な運用に成功すれば、導入コスト以上の利益を生み出せる可能性があります。
大きな設置スペースの確保が必要である
遠隔操作ロボットを導入する場合は、大きな設置スペースの確保が必要です。遠隔操作ロボットを操縦する場合は、ロボットと操作する側のスペースを設けなければいけないからです。
特にコックピット型の遠隔操作ロボットの導入を検討している場合は、各種センサーやカメラを取り付けるスペースも必要となります。
操作する距離によって通信速度に遅延や動作制限がされる恐れがある
遠隔操作ロボットは、操作する距離によって通信速度に遅延や動作制限がされる恐れがあります。そのため遠隔操作ロボットを導入する際には、施設内のネットワーク環境も整える必要性が出てきます。
主要の遠隔操作ロボット
ここでは、主要な遠隔操作ロボットを6つ解説します。
Successor
川崎重工業が開発した「Successor」は、熟練技術者の技能継承を実現するロボットシステムです。
Successorでは、作業員が操作装置を用いて作業を繰り返せば人間特有のさじ加減をAIが学習し、細かな部分まで人間の動きを再現できるようになります。
COBOTTA
デンソーが開発した「COBOTTA」は、工場における部品の仕分け作業や医薬品研究現場での正確な繰り返し作業を遠隔上で可能にするロボットです。COBOTTAの重さは約4kgとなっているため、人手不足の際にすぐ活用できます。
また、COBOTTAを活用する際にはプログラミング等の専門的な知識は必要ありません。アームを直接動かして作業内容を覚える機能や、カメラを用いて業務内容を真似する機能が備わっているからです。
AIエッジロボット
沖電気工業が開発した「AIエッジロボット」は、労働力不足や感染症拡大の防止を目的にしたロボットシステムです。AIエッジロボットの特徴は、コンピューターによる自律動作システムと運用センターからの遠隔管理の組み合わせが挙げられます。
またAIエッジロボットには周囲360度の映像を見渡せる機能があるため、ロボットにエラーが発生した場合は、あらゆる視点から目視で確認可能です。
テレワークロボット
スマートロボティクスが開発した「テレワークロボット」は、運搬や会話、見回りなどを遠隔から実施できるロボットです。テレワークロボットは、初期設定が不要であるため、契約してからすぐに利用を開始できます。
また、テレワークロボットは希望に沿ってアームや荷台の設置などができます。そのため、自社環境に合ったロボットへとカスタマイズして運用できるでしょう。
ugo R
ugoが開発した「ugo R」は、アームを用いた軽作業やフロア間を移動して見回りの実施が可能なロボットです。
ugo Rは、肉体と音声合成によるコミュニケーションや、表情や警備中等の文字情報の表示が可能で、定常的巡回に適したロボットとして活躍しています。
MORK
インディ・アソシエイツが開発した「MORK」は、インターネットを経由することで、自宅や離れたオフィスから自由に操作できるロボットです。MORKは目の位置と前後左右を見渡せる「アラウンドビューカメラ」が付属しているため、安全に操作できます。
また、フル充電状態では7時間ほど稼働し続けられるため、充電時間を考慮しなくても良いメリットがあります。MORKは人が歩くスピードに合わせ追従する機能もあることから、接客業務に適しているでしょう。
製造業における遠隔操作ロボットの種類とその特性
製造業における遠隔操作ロボットについて、以下の2種類を解説します。
- マスタースレーブ型
- コックピット型
それぞれの特性も紹介するので、違いを詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。
マスタースレーブ型
マスタースレーブ型とは、複数の機器やソフトウェアなどが連携して動作する際に1つが管理する側、もう1つが制御される側といったように役割を分担する形式のロボットです。
マスタースレーブ型を導入すれば、危険な作業を行う場合に作業者側の安全な場所を確保して作業できたり、直感的に操作できるので作業効率が向上したりします。
一方でマスタースレーブ型を導入した場合は、遠隔操作可能距離が通信媒体によって制限されてしまう可能性やコストが2倍かかるデメリットがあります。
コックピット型
コックピット型とは、カメラ映像やセンサーを用いて現場や情報をモニタリングしながら操作するロボットです。
コックピット型を導入すれば、複数のロボットを同時に遠隔操作ができるため大幅な業務効率化ができたり、導入するロボットに応じて役割変更ができたりします。
一方でコックピット型はマスタースレーブ型と比べると対応メーカーが少なく、希望する作業ロボットがない可能性があります。
遠隔操作ロボットメーカーおすすめ5選
おすすめの遠隔操作ロボットメーカーについて、以下の5社を紹介します。
- 日本サポートシステム株式会社
- 株式会社MUJIN
- 株式会社コスモ技検
- リモートロボティクス株式会社
- アスラテック株式会社
自社に導入するロボットメーカーを悩んでいる方は、ぜひご覧ください。
日本サポートシステム株式会社
日本サポートシステム株式会社は、年間200台の製造実績を誇るロボットシステムインテグレーターです。
日本サポートシステム株式会社では、遠隔操作ロボットのラベリング装置を開発しており、24時間どこからでも操作できて省スペース化に役立てられています。
また、日本サポートシステムでは、設計から製造までワンストップで対応する一貫生産体制を実現しています。
株式会社MUJIN
株式会社MUJINは、世界中のトップエンジニアが集結した製造・物流のプロがロボット作りに携わっている企業です。
同社ではティーチング作業がいらない「MUJINコントローラー」等の製品を開発し、物流・製造現場の作業の自動化の実現に取り組んでいます。
株式会社コスモ技研
株式会社コスモ技研は、重工業や食品、化学業界など幅広い業界で、機械設計から組み立て、調整までロボットに関するトータルサービスを提供する企業です。
同社では、遠隔操作で遠隔地の工場を「見える化」できるシステム作りを行っています。またクライアント企業とのシステムと連携しコスモ技研社内から遠隔でサポートするシステムの導入も進め、工場のスマート化の実現を率先して進めています。
リモートロボティクス株式会社
リモートロボティクス株式会社は、川崎重工が所有するロボティクス技術とソニーグループの通信技術を活用して、リモートロボットプラットフォームの構築を目指す企業です。
例えば、クラウド環境でロボットのリモート操作を実施できるアプリ等を提供しています。リモートロボティクスは、プログラミングのノウハウに関係なく、誰でも簡単に使えるロボットの開発に力を入れています。
アスラテック株式会社
アスラテック株式会社とは、遠隔操作ロボットのソフトウェア開発やコンサルティングを実施している企業です。
同社が開発したロボット制御システムの「V-Sido」は、「DOKA ROBO」等の遠隔操作ロボットで採用されています。この例のように、同社ではさまざまな遠隔操作システムを独自で開発・提供しています。
まとめ
遠隔操作ロボットとは、遠距離から自由に操縦可能な機械です。遠隔操作ロボットを導入すれば、技術者不足の解消や業務の効率化を実現できます。また、遠隔操作ロボットは災害時等で人が立ち入れない場所でも活用可能です。
遠隔操作ロボットの導入により、社内の生産効率を向上させましょう。

