マテハン機器とは?5つの業務フロー別に種類を解説

マテハン機器は、製造業や運送業の業務効率化に欠かせません。そのため人手不足に悩む方のなかには、マテハン機器の導入を検討している方も多いでしょう。

今回は、マテハン機器の種類やメリット・デメリット、導入事例についてわかりやすく解説します。この記事を読めば、具体的な活用事例を把握できるため、マテハン機器を導入する判断がしやすくなるでしょう。マテハン機器の導入を悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。

マテハン/マテハン機器とは

マテハンとは「マテリアル・ハンドリング」の略称であり、材料や製品などを運搬する一連の作業を自動化する機器です。

自社にマテハン機器を導入すれば、業務を自動化できるため効率的に仕事を進められるようになり、コストの削減や省人化につながります。

マテハン機器の種類【業務フロー別】

マテハン機器の種類として、以下の5つの業務フローに分けて解説します。

  • 入庫業務
  • 搬入業務
  • 仕分け業務
  • 仕分け・保管業務
  • 出荷業務

入庫業務

入庫業務で必要になるマテハン機器として、以下の3つが挙げられます。

  • フォークリフト
  • ドックレベラー
  • パレタイザ

ここでは、それぞれの概要や特徴を紹介します。適切な在庫管理の実施や作業者の負担の軽減につなげるためにも、それぞれの違いを把握しましょう。

フォークリフト

フォークリフトとは、パレットに積載された荷物の運搬や高い位置への保管が可能なマテハン機器です。

特に無人フォークリフトの場合は専用の免許を所有している人材を雇用する必要がなく自動化が可能になるため、労働力不足の解消につながります。

またフォークリフトの積載量は機種によって異なり、1トンから20トンを超える車両までさまざまです。フォークリフトの積載量が多ければ大量の荷物を一度に移動させられるため、大幅な時間短縮につながります。そのため、購入する際は自社ニーズに合わせた積載量のフォークリフトを選ぶとよいでしょう。

ドックレベラー

ドックレベラーとは、工場で荷物の積み下ろし作業を実施する際に搬入入り口の床面と荷台に生じる高低差をなくすためのマテハン機器です。

ドッグレベラーを導入すれば、工場の搬出入り口でトラックの荷台との段差がなくなるため、荷物の積み降ろしがしやすくなり、作業者の事故を減らせるメリットがあります。

パレタイザ

パレタイザとは、パレットに積載物を自動的に載せるためのマテハン機器です。

積載物をパレットに乗せる作業は、かなりの重労働で時間がかかる作業です。そこでパレタイザを導入すれば、大幅な業務効率化につながります。

搬送業務

搬送作業とは、荷物を目的地へ届ける作業です。搬送業務で必要になるマテハン機器として、以下の2つが挙げられます。

  • AGV(無人搬送車)
  • コンベア

ここでは、それぞれの概要や特徴を解説するので、導入を検討する際の参考としてご覧ください。

AGV(無人搬送車)

AGV(無人搬送車)は、主に工場や倉庫で使用される場合が多く、人間が運転しなくても自動的に荷物の搬送ができるマテハン機器です。AGVはコンベアやレールを設置せずに導入できるため、ルート変更も容易です。

コンベア

コンベアとは、物を一定の方向に運搬するマテハン機器です。コンベアは、運搬しつつ組み立てや加工を実施する流れ作業をする際に適しています。

その特性から、コンベアは食品や荷物などの搬送業務で活用されています。

仕分け業務

過度な仕分け業務は、人的ミスの発生や想定以上の時間がかかってしまう恐れがあります。仕分け業務を効率化するためには、「ソーター」を導入するとよいでしょう。

これから、仕分け業務の効率化に適したソーターについて詳しく解説します。

ソーター

ソーターとは、搬送経路に複数の分岐機能を備え、短時間で大量製品の仕分けが可能になるマルハン機器です。ソーターの種類には、以下の2種類があります。

ソーターの種類 特徴
 

スライドシュー

樹脂製のシューで搬送物を押し出し、仕分けレーンに搬送物を出すソーター

衝撃を抑えて滑らかに搬送物を押し出すため、割れ物の仕分けも可能

 

クロスベルト

横方向にベルトコンベアを装備した搬送装置ユニットをつなげて構成されているソーター

配列の順応性が高く、さまざまな環境に適したレイアウト設定が可能

スライドシューは、袋物や割れ物の搬送物など破損が不安になる荷物を搬送する際に適しています。一方でクロスベルトはベルトサイズをカスタマイズできるので、大型の搬送物も容易に搬送できるでしょう。

いずれのソーターでも、壊れやすいものや大きいものなど、さまざまな荷物に適した搬送が迅速にできるようになります。

仕分け・保管業務

仕分け・保管業務で必要となるマルハン機器として、以下の2つが挙げられます。

  • 自動倉庫
  • 移動ラック

ここでは、それぞれの特徴や種類を具体的に紹介します。

自動倉庫

自動倉庫とは、自動搬送装置や倉庫管理システムなどを活用して機械化されたマルハン機器です。自動倉庫を実現するために必要なシステムとして、以下の4つが挙げられます。

自動倉庫を実現するために必要なシステム 特徴
自動倉庫システム 入庫・保管・出荷の流れを一元化するシステム
自動搬送ロボット 商品のピッキングや運搬するロボット
ピッキングシステム ハンディターミナルを中心としたデジタル機器を活用して、倉庫内のピッキング作業を効率化させるためのシステム

リアルタイムで商品情報の管理が可能

倉庫管理システム 倉庫内での商品の入庫や在庫管理機能、納品書の作成などさまざまな機能が搭載されたシステム

自動搬送ロボットは、作業者が倉庫内を歩く必要がなくなるため、倉庫が狭い場合に活用できるシステムです。また自動搬送ロボットを導入すれば、人件費削減や人的ミスの軽減などのメリットが得られます。

移動ラック

移動ラックとは、床に設置されたレール上で移動する棚です。移動ラックを導入すれば、フォークリフトで作業するエリアを最小限に留められるため、比較的多くの棚を配置できます。移動ラックの種類として、以下の3つがあります。

移動ラックの種類 特徴
電動式 障害物感知センサー等を搭載し、ボタン1つで棚が自動的に動く形式の移動ラック
手動式 棚を押したり引いたりして、手動で動かす形式の移動ラック
ハンドル式 棚取り付けられたハンドルを回すことで、棚を動かす形式の移動ラック

現在主流となっている移動ラックは、電動式です。電動式移動ラックの場合は、作業者の労力を必要とせず、比較的移動がスムーズにできるメリットがあります。そのため作業効率を上げたい場合には、電動式が適しています。

出荷業務

出荷業務とは、ピッキングや検品、梱包などです。出荷業務で必要となるマルハン機器として、以下の2つを解説します。

  • デジタルピッキングシステム
  • 自動製函機

デジタルピッキングシステム

デジタルピッキングシステムとは、デジタル表示器を活用してピッキング作業を実施するマテハン機器です。商品が保管されている棚にデジタル表示器を貼り付け、表示器からの指示を受けながら商品を収集します。

自動製函機

自動製函機とは、段ボールを自動的に組み立てられるマテハン機器です。段ボールの組み立てはかなり時間がかかるため、生産性低下の要因となり兼ねません。自動製函機は底面のテープ貼りまで実施してくれるため、ほかの作業に時間を割けられます。

マテハン機器導入のメリット・デメリット

ここでは、マテハン機器を導入するメリットとデメリットを解説します。

マテハン機器を導入する際に適切な判断を下すためには、メリットとデメリットを把握しなければいけません。マテハン機器の導入を検討している方は、実際に機器を導入する判断材料にしてください。

メリット

マテハン機器を導入するメリットとして、以下の3つを解説します。

  • 省人化によるコスト削減
  • 作業中の事故防止
  • 人的ミスの軽減

マルハン機器を導入すれば、省人化によるコスト削減が実現できます。マルハン機器を導入した場合は、手作業でしていた業務が自動化するため、人件費の削減につながるからです。

また、マルハン機器を導入した場合は、作業中の事故防止にもつながります。例えば、重量物の運搬や荷物のピッキングなど作業者にとって負担の大きい作業を自動化すれば、作業者が怪我する可能性を軽減できるでしょう。

さらに、マルハン機器はマニュアル通り動いてくれるため、人的ミスの軽減にもつながります。

デメリット

マテハン機器を導入するデメリットとして、以下の2つを解説します。

  • 設備トラブルにおける負担の増加
  • 機器選びに膨大な時間がかかる

マテハン機器を導入すれば、設備トラブルにおける負担の増加するデメリットがあります。マテハン機器は機械であるため、通信エラー等により急停止してしまうこともしばしばです。マテハン機器でトラブルが発生した場合は、メンテナンスや買い替えるために膨大な費用がかかります。

また、多種多様なマテハン機器が提供されているため、選定する際に膨大な時間がかかります。効率よく製品を選ぶためにも、本記事の導入事例を参考にするとよいでしょう。

マテハン機器の導入事例

ここでは、マテハン機器の導入事例を5つ紹介します。

コンベアによる仕分け作業の効率化

株式会社タカゾノでは、医療機器の製造工場にて12kgの製品の仕分けと積み込みをしていました。

元々、2名の作業者が仕分けから積み込みまで担当していましたが、生産量の増加にともない作業環境が悪化し、業務改善のためにコンベアの導入を決意します。

その結果、仕分け作業の効率化を実現し、作業人数を6人から4人へ削減できました。さらに生産量は、1日あたり200個分増やすことに成功しました。

ソーター導入による人手不足の解消

ジット株式会社は、リサイクルインクの物流部門において深夜までに及ぶ出荷作業や頻発する出荷ミスに悩みを抱えていました。

そこで株式会社椿本チエインの「リニソートSC」を導入しました。導入後はリニソートSCの正確な仕分けにより作業の習熟度が求められなくなったことで人手不足の解消につながり、処理数が最大約2倍にまで向上しています。

パレタイザによる積み付け作業の自動化

協和紙工株式会社は、出荷ケースの荷下ろし作業において人手不足により、県外からも作業者を募集したり、繁忙期には2〜3時間の残業が続いたりと、状況が悪化していました。

そこで株式会社Mujinの「Mujin Robotデパレタイザー」を採用しました。その結果、安定的な労働力を確保し、作業計画が立てやすくなり、定時より1~2時間前には作業が終了するようにまで改善できています。

デジタルピッキングシステム導入により作業精度99.96%を実現

公文教育研究会は、FAXの注文票を目で追いながら自社商品を積み込みしていたため、ピッキング作業に膨大な時間がかかっていました。

そこで株式会社アイオイ・システムの「デジタルピッキングシステム SWシリーズ」を導入。その結果、作業精度99.96%を実現し、人的ミスの軽減につながり作業スピードを大幅に向上できました。

AGVによる収穫作業の負担軽減

株式会社タカヒコアグロビジネスのパプリカ生産施設は、栽培室から集出荷室まで約180メートル離れており、収穫したパプリカを約200キログラムの荷台で何度も往復する必要があります。そのため作業者にとって、大きな負担となっていました。

そこでシャープ株式会社の「自動搬送装置(AGV)」を導入。その結果、作業者の負担を大きく軽減し、業務効率の向上を実現しました。

まとめ

マテハン機器の導入により、多くの企業で業務効率の向上や人手不足の解消が実現できています。本記事で解説した事例を参考にし、マテハン機器の導入を進めましょう。