国立研究開発法人・科学技術振興機構(JST)は2022年5月20日、東京大学をはじめとする各大学およびパナソニックインダストリーらと共に、ヒトの呼気データをセンシングにかけ個人認証を行う技術の原理を実証したと明らかにしました。
JSTによると、ヒトが皮膚や呼気から排出するガスには多数の共通する成分が含まれていますが、これらにはパターンがあり、個人の特定も可能とのこと。研究グループが年齢や国籍・性別が異なる被検者の呼気から生体ガスを採取し、識別したところ、いずれも異なる反応が得られたとしています。
識別に用いられた技術は、16 種類の異なる性質の高分子材料などで構成される「人工嗅覚センサ」とニューラルネットワークモデルに基づく機械学習技術です。呼気情報を嗅覚センサーでデータ化し、これに人工知能を適用することで、個人識別可能なデータを抽出するとのこと。
なお、研究グループが対象者を20名に増やし実験したところ、個人の識別制度は97%以上の精度を記録。呼気による識別技術が個人認証技術として実現することに期待感を露わにしました。
偽造や窃取は困難、指紋などより高セキュリティか
研究グループは生体ガスによる個人認証技術について、高いセキュリティ認証の実現につながる可能性があるとしています。
生体認証技術には、指紋や掌紋、顔や虹彩などがありますが、これらの技術は物理的情報によるものであるため、偽造や窃取による不正認証も不可能ではありません。対して、生体ガスは保管や記録が難しく、長期的ななりすまし行為は極めて困難であるとのこと。
もっとも、研究グループは生体ガスによる認証について、摂食が及ぼす認証制度への影響など未だ多くの課題がある点にも触れています。今後は研究で得られた知見に基づき、センサーのチャネル数の増設やパフォーマンスの向上を計画しているとのこと。
将来的に、息を吐くだけで認証可能なシステムが登場するかもしれません。
参照人工嗅覚センサを介した呼気センシングによる個人認証―化学情報による偽造できない生体認証技術実現へ期待―

