画像:日本製鉄株式会社より引用
日本製鉄株式会社は2022年3月9日、製鉄現場作業者の作業データを人工知能により可視化し解析する基盤を構築したと明らかにしました。
日本製鉄の説明によれば、今回の解析基盤構築は人工知能による熟練技術の効率的な伝承を目的とした実証実験の一環として実施されるものです。実験は人工知能スタートアップのエクサウィザーズが提供する人工知能システム「exaBase ロボティクス」が使用し、熟練工の技術をデータ化するというもので、各現場作業員の操作情報を収集した上で「exaBase ロボティクス」が勤続10年以上の熟練作業員の作業データを解析し、技術を可視化したとのことです。
製鉄業界は人口減少の煽りを受け、現場作業員の高齢化が続いており、若手への技術伝承が課題となっています。両社は問題を解決するため人工知能により可視化などデータを運用しやすい形に変換し、若手が作業した場合も熟練作業員と同じ品質の仕事ができるよう、支援するソフトウェアの開発を目指すとしています。
形式知と暗黙知
熟練者の技術伝承が困難とされる根本的な原因は、対象が持つ技術が非言語・不可視など他者への伝達が難しい性質を持つからです。
こうした技術は暗黙知と呼ばれ活用が難しい技術として扱われます。特に企業経営において属人性の強い暗黙知が事業展開の妨げとなってしまうため、暗黙知を言語化・可視化した形式知に変換するナレッジマネジメントと呼ばれる考え方が生まれました。
ところが、ナレッジマネジメントはどんな暗黙知でも形式知化できるわけではありません。形式知化を諦めざるを得ないケースも多々見られ、限界が語られることもありました。
今回、日本製鉄らが実施している実験は、こうした従来の常識を打破する可能性すらある実験です。人工知能による形式知化が進むことで、これまで難しいとされてきた熟練者の「カン・経験」がコモディティ化するかもしれません。
参照製鉄所現場の重機操業をAIによりデジタル化 熟練作業の効率的な技能伝承を実現する基盤構築・実証実験を開始

