カシオ計算機が、人工知能(AI)を活用し、皮膚がんの診断を支援する技術の開発に挑んでいる。同社の画像技術とAIの組み合わせは、皮膚がん以外でも研究が進んでおり、今後専門性の高い高精度な診断の補助が期待されている。
カシオは業界初の液晶モニター付きデジタルカメラの発売、これまでカメラ市場の成長を支えてきた。画像処理技術を得意としており、自撮りカメラ”には肌をきれいに見せる技術を組み込んでいる。
近年、医療分野では、画像処理技術とAIを組み合わせた診断支援が注目され、同社だけでなくキヤノンや富士フイルムなども研究を続けている。
最終的な病気の診断は医師の領分だが、病変画像の微妙な経時変化や、色の分布の細かな違いを見分けるのは、見たものを忘れないコンピューターの方が得意な場合もある。人の能力を補うことを狙いとしている。
カシオは、信州大学と共同で、皮膚がんの悪性黒色腫(メラノーマ)などほくろに似た病変の診断支援技術の開発をめざす。皮膚を特殊な拡大鏡で拡大して撮影する「ダーモスコピー検査」の画像を機械学習でコンピューターに学習させ、判別の精度を高める。
今年3月に、カシオと信州大が開発中の皮膚疾患の画像診断システムは、国際コンテスト「ISBIチャレンジ2017」の皮膚疾患の自動判別部門で約30チームの中で1位を獲得している。
初期のメラノーマやほくろ、イボは非常に似ていて、見分けることは難しく、医師であっても技能の習熟が必要。メラノーマは2―3カ月で急激に肥大することや、がん細胞が他の臓器に転移するリスクも高いため、初期に診断する必要がある。海外にはダーモスコピー検査を義務化した国もあるほどで、AIによる早期診断のニーズは高い。以前は白人患者が多かったが、最近は日本人患者も増加傾向にあることから国内でのニーズも今後高まっていくだろう。
同社は現在、診断支援に先行し、ダーモスコピー検査のノウハウを学習する医師向けクラウドサービス「D,z IMAGE」を行い、医師の技能習熟を行っている。また症例集や学習用の問題などを無料で提供しているとのこと。
<参考>
コアテクノロジー・人工知能&ビッグデータ活用/カシオ計算機−皮膚がんの診断を支援/日刊工業新聞