UCL、訴訟時間短縮を目的とした“AI裁判官”を開発

University College London(以下UCL)、シェフィールド大学、ペンシルバニア大学の共同研究チームは、AI(人工知能)搭載の裁判官型ロボットを開発したことを発表しました。

研究及び開発の詳細

まず、UCLのニコラオス・アレトラス博士ら研究チームメンバーにより、AIの学習として下記3点に関連する事件においてのデータ約580件のスキャンが行われました。

  • 欧州人権条約第3条:拷問の禁止
  • 同条約第6条:公正な裁判を受ける権利
  • 同条約第8条:私生活および家庭生活の尊重

さらに、誤学習を防ぐため、学習した「人権侵害」のデータ件数と同量の「非侵害」案件のスキャンも行われました。

この結果AI裁判官は、欧州人権裁判所で過去実際に行われた司法裁判と同様の内容で、79%の精度で人間と同じ判決を下したのです。

今後は、業務の一部にAI機能を用いて自動化するなど、訴訟時間短縮に向け更なる研究開発が進む予定としています。

課題は“道徳心”への配慮

世界的に普及が進むAI製品ですが、司法分野においても活躍が期待されています。

既にIBM社が開発したスーパーコンピューター「ワトソン」の計算能力を利用した人工知能「ロス」は、法律事務所に導入され破産問題の対応を行っている事例などもあります。

しかし、司法分野への導入において懸念事項とされるのが、“ニュアンスの理解”です。
“1+1=2”のように単純明快な案件は少なく、どの事件においても判断材料となる項目は多種多様です。

これら情報の総合的な判断や、また人間に備わる“道徳心”への配慮も課題と言えます。