ロボットアームの制御方法とは?構造や必要なエネルギーを解説!

ロボットアームの導入を考えているけれど、制御方法がわからない方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、ロボットアームの構造や制御方法、動かすために必要なエネルギーを紹介します。また、ロボットアームを制御する際の注意点もまとめているので、正しく運用するためのポイントを理解できるでしょう。

ロボットアームの導入に悩んでいる企業の皆さまは、ぜひ参考にしてください。

種類別ロボットアームを制御する構造

ロボットアームは、構造によって種類や制御方法が異なります。ここでは7つのロボットアームの制御構造を詳しく解説します。

垂直多関節ロボット

垂直多関節ロボットは、アームの運動方向を決める関節と関節同士をつなぐリンクからなるロボットアームです。回転運動が可能であり、斜め方向からの作業ができるなど、可動範囲の広さが特徴です。

そして、リンクの先には実際に作業を行うエンドエフェクタが取り付けられています。

垂直多関節ロボットはサーボモーターにより可動部分である関節を動かし、リンク部分を移動させながらエンドエフェクタを目的の位置へ移動させることで制御します。

また、エンドエフェクタの種類を変えることで、塗布や溶接が可能です。

スカラロボット

スカラロボットは水平多関節ロボットとも呼ばれ、アームが水平方向に動く多関節ロボットです。スカラロボットは、水平方向の移動を制御できるように3つの回転軸から構成されます。先端部は上下方向に移動する直線軸によって、動きが制御されているのです。

スカラロボットの特徴は、水平に動く部分と垂直に動く部分に分かれている点です。胴体部分は水平動作のみで、先端部分は垂直にしか動きません。

このようにスカラロボットは胴体と先端で制御できる方向が違います。そのため、胴体で製品の位置まで移動し、先端で押し込み動作を行うように、動作上の役割も異なります。

詳しくはこちらスカラロボット(水平多関節ロボット)とは?種類や活用事例・おすすめメーカー8選

パラレルリンクロボット

パラレルリンクロボットは、複数のリンクが並列につながったロボットアームです。垂直多関節ロボットやスカラロボットと同様に、パラレルリンクロボットも多関節ロボットの一種です。直列リンクの垂直多関節ロボットとは異なり、並列にリンクがつながっている特徴を持ちます。

天井から吊り下げられ、3本のアームを持っている構造が一般的です。複数のモーターで制御を行うことで先端部分に力を集中させられるため、精度が高く動きが速いのが特徴です。

ほかの多関節ロボットと比べ、パラレルリンクロボットは可搬重量や可動範囲に制限があります。立体的な動きを必要とする作業が苦手なため、求める作業内容とパラレルリンクロボットが対応できる作業内容が合っているか確認してから導入しましょう。

直交ロボット

直交ロボットは、2つから3つの直交するスライド軸を持つロボットアームです。直交ロボットのアームは、スライド軸に沿って動きます。

直線的な動きしかできない分、作業のズレが少なく高精度な動きができます。シンプルな構造ゆえ、価格も比較的リーズナブルであり、ほかのロボットと組みあわせて導入するケースもあります。

また、リンクは曲げられないため、設置するのにある程度のスペースが必要です。

直交ロボットは搬送作業を得意とし、重量物から繊細でくずれやすい豆腐などの食品まで、さまざまな製品を搬送できます。

詳しくはこちら直交ロボットとは?おすすめメーカー15社や導入事例・メリットまで紹介

双腕ロボット

双腕ロボットとは、垂直多関節ロボットもしくはスカラロボットのどちらかのアームを2本持つロボットです。そのため、双腕ロボットの構造は、垂直多関節ロボットやスカラロボットと同じ仕組みで動きます。

近年、作業者とロボットが同じラインで作業できる協働ロボットとして活躍しているのも双腕ロボットです。

アームが1つしかないロボットの場合には、スカラロボットで固定したうえで垂直多関節ロボットで作業するように、2つのロボットを導入しなければなりませんでした。

一方で双腕ロボットでは片方のアームで製品を固定し、もう片方のアームで作業するなど、1体で2役を担えます。これにより省スペースでの導入が可能となったのです。

極座標ロボット

極座標ロボットは、上下方向に動く2つの回転軸と、伸び縮みする1つの直進軸からなるロボットアームです。

マニュピレータを設置する土台の部分が旋回する構造になっており、左右に回転します。

極座標ロボットは産業用ロボットの元祖であり、日本国内では1969年に初めての産業用ロボットとして開発されました。この極座標ロボットをルーツに、さまざまな産業用ロボットへと進化を遂げたのです。

円筒座標型ロボット

円筒座標型ロボットは、回転軸を最低1つと直進軸を1つ持つロボットアームです。

マニュピレータを設置する土台の部分が旋回して左右に回転し、伸び縮みするアームから構成されています。アームを上下に動かせるところが、極座標ロボットとの違いです。

円筒座標型ロボットは360度回れるため、接地面に対する可動範囲が比較的広いのが特徴です。回り込みの必要な作業は苦手としているため、回り込む必要がない半導体の搬送で活躍しています。

ロボットアームの滑らかな動きを制御する要素

ロボットアームを滑らかに動かすためには、さまざまな要素によって制御する必要があります。ここでは、ロボットアームを制御する4つの要素を紹介します。

アクチュエータ

アクチュエータとは、ロボットアームの軸を構成し、動力となるエネルギーを直進・回転・屈曲などの動きに変換する要素です。

人間の腕でいうと関節のような役割を果たすため、ロボットアームを動かすにはアクチュエータが不可欠です。

アクチュエータには、高性能なモータが使用されます。これは、単純なモータでは精度が低くなり、ロボットアームの速度や位置を精密に制御できないからです。

アクチュエータの多くは、電気エネルギーを動力としています。ほかにも、油圧エネルギーや空圧エネルギーが使われるケースもあります。動力として使われるエネルギーにはそれぞれ特徴があり、油圧式アクチュエータの場合は衝撃に強いのが特徴です。

減速機

減速機は、アクチュエータを構成する要素の1つです。

単にロボットアームを動かすのであれぱ、アクチュエータだけでも動かせます。しかし、アクチュエータのモータには限度があるため、限界を超えるとそれ以上回転できなくなります。

そこで、力を増幅する減速機が必要になるのです。モータと減速機を組み合わせることで、本来モータが持つ回転力を超えて回転できるようになります。

減速機の構造としては、自転車のギヤと同じです。ギヤを変えると、小さな力でも大きな出力へと変化します。同様に、減速機のギヤを変え、モータの力を最大限に発揮できるのです。

エンコーダ

エンコーダは、ロボットアームの角度や位置を正確に測定する要素です。具体的には、モータが回転する向きや角度、速度を計測し、アクチュエータの位置を制御します。

多くのロボットアームでは、光学式エンコーダが使用されます。光学式エンコーダとは、回転ディスクと固定ディスクに等間隔であけられたスリットに光を通して感知する方法です。

光が通り抜けた回数によって角度や速度を感知します。そして、感知した光の信号を電気信号に変換し、位置の制御を行います。

伝導機構

伝導機構とは、アクチュエータや減速機によって発生した力を、ほかの部分へ伝えるための要素です。伝導機構の種類によって、伝える力の向きや大きさを変えられるのが特徴です。

例えば自転車の場合、ペダルを回して力を発生させ、それをタイヤへ伝えて自転車が走ります。このとき、力をタイヤへ伝えているチェーンが伝導機構にあたります。

ロボットにおいても同じように、発生した力を使えるチェーンやベルト、歯車などが伝導機構です。これにより、発生した力を必要な部分へ伝えています。

ロボットアームを制御するエネルギー

ロボットアームを制御するためには、エネルギーが必要です。そして、使われているエネルギーにはさまざまな種類があります。

ここでは、電気エネルギー・油圧エネルギー・空圧エネルギーの3つを紹介します。

電気エネルギー

電気エネルギーとは、アクチュエータがロボットアームを動かすときの運動エネルギーへ変換するために使われるエネルギーです。モータの回転によって発生し、ロボットアームの制御によく使われています。

電気エネルギーのメリットは、伝達の速度が速い点です。また、モータの操作によって、ロボットアームを動かす力の大きさを細かく調整できる点もメリットとして挙げられます。これにより、精度の高い位置決めが可能であり、速度の制御にも対応できるのが電気エネルギーの特徴です。

電気エネルギーを使ったロボットアームは、作業内容が変わってもロボットアームを制御するためのデータを変更するだけで対応できます。一方でロボットアームを動かすためには、プログラミングが不可欠であるデメリットも持ち合わせています。

油圧エネルギー

油圧エネルギーは、ロボットのサイズに対して大きな推力を発揮できる点が特徴のエネルギーです。そのうえ、速度の制御がしやすいメリットもあります。

制御性の高さは電気エネルギーより劣りますが、高温に強く耐久性が高いため、強い衝撃を受ける可能性がある環境で活躍します。これ以外にも、振動が少なかったり、エネルギーを蓄積できたりするのも油圧エネルギーの特徴です。

空圧エネルギー

空圧エネルギーとは、コンプレッサーで大気を加圧したり圧縮したりして、その圧力や膨張力によって発生するエネルギーです。空圧エネルギーは、油圧エネルギーと比べて比較的低い圧力で使用されるケースが一般的です。

ロボットアームを動かすために必要な空圧エネルギーを発生させるための設備も複雑ではないうえに、火災の恐れもないため、安全性が高いエネルギーであるといえます。また、コンプレッサーは比較的安価なものであるため、設置にかかる費用が抑えられるメリットもあります。

ロボットアームを制御する方法

ロボットアームを制御するには、ロボットビジョンシステムを使ったり、ロボットティーチングを行ったりする必要があるのです。ロボットビジョンシステムとロボットティーチングでは、それぞれ特徴や方法が異なります。

ここでは、これら2つの制御方法について、詳しく解説します。

ロボットビジョンシステム

ロボットビジョンシステムとは、カメラを通して、製品の位置や大きさなどの作業に必要な情報を処理するシステムです。

ロボットアームに付いているカメラで製品に関する情報を得て、画像検知技術により処理し、動作システムに情報を送信します。そして、動作システムを作動させて製品がある位置へロボットアームを動かすのです。

ロボットビジョンシステムを搭載したロボットアームでは、製品の状況から自動的に判断し、臨機応変に処理できます。そのため、不規則に商品が並んでいても作業を進められるメリットがあります。

ロボットティーチング

ロボットティーチングとは、プログラミングやリモコンなどによってロボットを制御する方法です。

ロボットティーチングには大きく4つの方法があり、それぞれティーチング方法が異なります。例えば、AIによって自動的にティーチングを行う方法や、手動でロボットを動かし、動作を記憶させる方法があります。

ただし、ロボットティーチングを行うにはプログラミングなどの専門的な知識が必要です。そのため、自社でティーチングを行うには人材を育てる必要があり、ロボットアームを導入するまでに、人材育成の手間や期間がかかるのがデメリットです。

ロボットティーチングのデメリットをなくすうえでは、専門知識が豊富なロボットSIerにロボットティーチングを依頼し、ロボット制御を任せる方法もあります。

参照ロボットティーチングとは?種類や資格・人材確保の方法を紹介

参照ロボットSIer(ロボットシステムインテグレータ)とは?導入事例や補助金・おすすめメーカー5選まで

ロボットアームの制御を行う際の注意点

ロボットアームの制御を行う際には注意点があります。ここでは、3つの気をつけるべきポイントについて深掘りします。

安全対策が必要

ロボットアームの制御を行う際には、安全対策が必要です。ロボットアームの運用には、リスクがつきものです。例えば、ロボットアームと作業者の接触など、大きなトラブルが発生する可能性があります。

そのため、ロボットアーム関連の事故をなくすために、セーフティーライトカーテンやセーフティースキャナの導入を検討しなければならないケースもあります。セーフティーライトカーテンやセーフティースキャナでは、ロボットアームに近づいてきた作業者を感知し、アーム自体の動きを遅くしたり停止させたりなどと、柔軟な制御が可能です。

メンテナンスが必要

ロボットアームをきちんと制御し続けるためには、メンテナンスが必要です。日常点検や定期点検によって、ロボットアームに異常がないか確認しましょう。

日常点検では、ロボットの稼働前や稼働後に、異音やガタつきがないか確認します。定期点検では、普段は見えないロボットの内部を点検します。また、ロボットアームの各種部品は適切な時期に交換しましょう。

ロボットアームが故障してしまっては、制御もできません。これらのメンテナンスによって、ロボットアームが本来の力を発揮できるようになるのです。

専門知識が必要

先程も述べたように、ロボットアームの制御には専門知識が必要です。しかしロボットアームの導入を検討している企業さまのなかには、ロボットアームの制御を任せられる人材が不足している場合もあるでしょう。

ロボットの制御で悩んでいる場合は、ロボットSlerの利用がおすすめです。ロボットSIerとは、ロボットのシステム提案や設計、導入などを行ってくれる企業を指します。ロボットに関する専門知識が豊富で、もちろんロボットの制御も行ってくれます。

ロボファン」は、導入目的に合わせてロボットSlerを紹介するサービスです。ロボットアーム導入時の悩みや補助金など、丁寧にお答えします。

ロボットアームの導入でお悩みの企業さまは、一度ご相談ください。

まとめ

ロボットアームをうまく活用するうえで、適切な制御方法のアームを選ぶ必要があります。それぞれ特徴が異なるため、ロボットアームの制御方法をきちんと理解し、導入を進めましょう

また、ロボットアームを制御するためには注意点もあります。自社で対応できない場合には、ロボットSIerを活用するとよいでしょう。

ロボファンでは、産業用ロボットアームを取り扱う優秀なロボットSlerを紹介しています。お気軽にお問い合わせください。