今回は、ロボットアームの機能やおすすめのメーカー、導入事例についてわかりやすく解説します。
本記事を読めばロボットアームの種類や使用用途を把握でき、多角的な視点から導入を判断できるでしょう。産業用ロボットアームの導入を検討中の企業の皆さまは、ぜひご覧ください。
目次
ロボットアームとは
ロボットアームとは、人間の腕のような働きをする産業用ロボットです。ロボットアームは、主に以下3つの部分に分けられます。
- 回転軸とリンクから成るマニュピレータ部
- 製品をつかむハンド部
- ロボットを制御するコントローラ部
ロボットアームは回転軸の数やハンド部の種類によって、多種多様な作業が可能です。
産業用のロボットアームを導入する際には、作業者の安全を確保するために安全柵を設けます。しかし、協働ロボットのロボットアームであれば、安全柵を設けずに導入できます。
ロボットアームの機能と使用用途
ロボットアームは多彩な機能を持っているため、さまざまな用途で使えます。ここでは、ロボットアームではどのような作業が可能であるか紹介します。
溶接
溶接とは、金属同士を加熱により溶かして接合する作業です。
レーザーなどで金属を溶かすため危険な作業であり、作業者が作業を行うには安全対策が必要不可欠です。また、溶接箇所を正確に溶かさなければならず、技術が求められます。
ヒートウェーブ機能があるロボットアームでは、ウィービングの動作にともなって左右の溶接条件を変化させ、厚みの違う板の溶接が可能です。また、ワークの位置や形状変化をアークセンサなどさまざまなセンサで感知し、正確に溶接を行います。
これらの機能により、ロボットアームが溶接を担えるため、作業者の安全性を確保できます。そのうえ、正確な溶接が可能になり、品質の向上を目指せるのです。
組み立て
組み立て作業では、金属部品のネジ締めを行ったり、異なるプラスチック部品同士を組み付けたりします。
作業者が組み立て作業を行うと、長時間同じ作業をする必要があるため、ヒューマンエラーが発生する可能性があります。また、組み立て作業にはさまざまな種類があり、体力が必要なケースや精度が求められる場合もあるのです。
組み立て作業で導入されるロボットアームには回り込み機能があるため、さまざまな方向へのネジ締めが可能です。
ロボットアームを組み立て作業へ導入すれば、長時間の作業でも効率が落ちないメリットがあります。可搬重量が大きいロボットアームや精度の高いロボットアームなど、組み立て作業に合わせて導入すれば、作業者の負担を減らせます。
塗装
自動車のボディなど、部品や製品にスプレーガンで塗料を吹き付ける作業を塗装といいます。
ムラなく色を付けるためには均一に塗料を吹き付けなければならず、作業者の技術が問われます。また、塗料が手についてしまったり、塗料の匂いが充満していたりと作業環境がよくないケースもあるのです。
塗料は可燃性のものが多く、塗装作業を担うロボットアームには防爆機能が備わっています。
これにより、危険な塗装作業をロボットアームが行い、作業者の安全を確保できるのです。ほかにも、垂直多関節型のロボットアームであれば、斜め方向への回転も可能なため、部品が複雑な形状でも塗装可能であるなどのメリットがあります。
箱詰め
プラスチックトレーなどに製品を詰める作業を箱詰めといいます。例えば、ベルトコンベアにのって流れてきた食品を箱に入れる作業を指します。
単純作業であるため、作業者が行うと抜け漏れや向きを間違うなどのヒューマンエラーが発生しやすい工程です。しかし、ロボットアームが担えばこれらのミスを防げるのです。
ロボットアームのなかには、たくさんの製品をカメラやセンサーなどで識別し、適切な場所へ箱詰めする機能がついたものもあります。
検査
ロボットアームは、製品が不良品でないかどうか検査し、次の工程へ流すか流さないか振り分ける作業も可能です。ロボットアームに搭載されるカメラなどで、異物の混入や傷の確認を行い、外観検査を行います。
検査用のロボットアームの導入検査によって、人間の視覚や感覚に依存しなくてよくなるため、品質の均一化や作業の効率化が目指せます。これ以外にも、大きいサイズの製品を動かしながら検査をしなくても、ロボットが位置を変えれば検査が可能であるなどのメリットもあるのです。
切削加工
切削加工とは、工具などを使って製品を削り取る作業です。切削加工自体は産業用ロボットによって行われるケースがほとんどですが、機械へのセットや確認の作業は従来、作業者の手によって作業していました。
切削作業には潤滑作用のあるオイルを必要とするため、内部給油機能を備えたロボットアームもあります。
これにより、切削作業をロボットアームが担えるようになり、作業ロスの軽減が可能になったのです。切削加工を完全に自動化できるため、省人化にも期待できます。
運搬・搬送
製品を運ぶ、運搬や搬送もロボットアームでできる作業です。部品を次工程のコンベアへ移したり、パレットへ製品を積み上げたりできます。
運搬や搬送にもさまざまな動きがあり、それぞれ適したロボットアームを使う必要があるのです。例えば、コンベア間を移動する必要がある場合には、水平間の移動スピードが速いスカラロボット、積み上げる作業には上下の移動が得意な垂直多関節ロボットが向いています。
現在では、自律走行搬送ロボットとロボットアームを組み合わせ、作業者が行っていた運搬作業をそのまま自動化できる技術も開発されています。
ロボットアームの種類
ロボットアームには、下記のようにさまざまな種類があります。
- 垂直多関節ロボット
- スカラロボット
- パラレルリンクロボット
- 直交ロボット
- 双腕ロボット
- 極座標ロボット
- 円筒座標型ロボット
例えば、垂直多関節ロボットは、リンクが直列につながっているロボットアームです。垂直多関節ロボットは回転運動が可能で、斜め方向からも作業できるなど可動範囲が広い特徴があります。
一方でパラレルリンクロボットは、複数のリンクが並列に、つまり並ぶようにつながっています。パラレルリンクロボットは動きが速いのが特徴です。
ロボットアームの種類によってできることが大きく変わるため、使用用途に合わせて適切な機能を備えたものを選ぶ必要があります。
詳しくは下記記事をご覧ください。
参照ロボットアームの機構とは?構造や人間の動きとの違いについて解説!
おすすめロボットアームメーカー20選
ここでは、おすすめのロボットアームメーカーを20社紹介します。各メーカーによって扱うロボットアームの特色が異なるため、参考としてご覧ください。
ファナック株式会社
ロボットに関する事業を幅広く手がけているのがファナック株式会社です。同社はミニロボットの「LR Mate 200iD」、大型ロボットの「Robot R-2000iD」など のロボットアームを取り扱っています。
ABB株式会社
ABB株式会社は、産業用ロボットにも力を入れており、「IRBシリーズ」を開発しています。アームの最大リーチが3メートル以上もある超大型のロボットアームなど、多様な産業用ロボットを取り揃えています。
株式会社安川電機
株式会社安川電機は、幅広い分野で活躍する産業用ロボットを扱っています。ロボットアームの「MOTOMAN-GP88」では、20kg以上ある製品でもコンテナへ積み上げられます。
川崎重工業株式会社
川崎重工株式会社では、ロボットアームの「Rシリーズ」を取り扱っています。小型汎用ロボットの「RS013N」では、最新の制振制御によって高スピードでも精度を落とさず動作できます。
ヤマハ発動機株式会社
ヤマハ発動機株式会社では、ロボットアームも手がけています。同社の全方位スカラロボットの「YK-TW」やハイコストパフォーマンスモデルの「YK-XE」は、さまざまな用途で活躍しています。
株式会社デンソーウェーブ
株式会社デンソーウェーブでは、コンパクトな「VS-050/060」を取り扱っています。ほかにも、リーチが長い「VMB-2515/2518」や超コンパクトな「VP6242」などを開発しています。
株式会社不二越
株式会社不二越では、産業用ロボットの製造を行っています。高速・高精度な作業が可能な「MZ07F/MZ07LF」や軽量ボディかつロングリーチの「MZ10LF」などを取り扱っています。
芝浦機械株式会社
芝浦機械株式会社は、ロボットアームのなかでもスカラロボットを主力としています。「THEシリーズ」「THLシリーズ」「TH1200A」などを取り扱い、用途に合わせてアーム長や機種選定ができます。
オムロン株式会社
ヘルスケア機器事業を手がけるオムロン株式会社ですが、ロボットアームも製造しています。スカラロボットの「i4L」や「i4H」「eCobra」は精密加工に向いています。
オリエンタルモーター株式会社
オリエンタルモーター株式会社は、精密小型モーターや電子回路の開発や製造が得意です。スカラロボットにおいて、同社が取り扱っているエンドエフェクタやコントローラが利用されています。
セイコーエプソン株式会社
セイコーエプソン株式会社では「Gシリーズ」や「GXシリーズ」、全方位稼働天吊りモデルの「RSシリーズ」、省スペースで導入可能な「Tシリーズ」など、ニーズに合わせたスカラロボットを取り扱っています。
KUKA Japan株式会社
KUKA Japan株式会社は、小型ロボットやシェルフマウントタイプのロボットアームを展開しています。最大可搬重量が1000kgの「KR1000titan」も取り扱っています。
三菱電機株式会社
三菱電機株式会社は、「MELFA」や「ASSISTA」を取り扱っています。また、複雑な加工作業や組み立てなどを行う垂直多関節ロボットや、高速かつ高精度な作業が可能なスカラロボットがあります。
平田機工株式会社
平田機工株式会社では、高速かつ高性能なロボットアームの「AR-Vシリーズ」を展開しています。AR-Vシリーズは、メンテナンスの負担を軽減できるバッテリーレスタイプです。
レオン自動機株式会社
レオン自動機株式会社は、食品機械を得意とする産業用ロボット製造メーカーです。包あん機や製パン機を得意としています。ロボットアーム「MRS」では、パンニングや二次成形を1台でこなせます。
イグス株式会社
イグス株式会社は、エンジニアリングプラスチックの素材開発や独自の製品を製造販売するメーカーです。「ロボリンクDP多関節アームロボット」では、最大6つの自由度を持ちフレキシブルな動作ができます。
テガラ株式会社
テガラ株式会社は、研究開発者向けに海外製品の調達を行うユニポスを展開しています。ユニポスでは、小型ロボットアームの「Niryo Ned2」「UFactory Lite 6」などを取り扱っています。
ストーブリ株式会社
産業用ロボットの製造を行うストーブリ株式会社は、世界的な企業です。ロボットアームにおいては、コンパクトで超高速動作が可能なスカラロボットの「TS2-40」などを扱っています。
ムラテックメカトロニクス株式会社
ムラテックメカトロニクス株式会社では、村田機械グループの製品などを設計・製造しています。毎分180サイクルの高速稼働ができるパラレルリンクロボットの「MPS2シリーズ」などを取り扱っています。
株式会社Mujin
株式会社Mujinは、技術的に難しかった製造現場などの作業を自動化するために、独自のコア技術「MujinMI」を搭載したロボットアームを提供しています。これにより、自律的に考えて臨機応変に作業できます。
ロボットアームを選ぶ際の注意点
ロボットアームを選ぶ際には5つの注意点があります。
- 自由度
- ペイロード
- 駆動方式
- 速度
- 精度
導入するのであれば、注意点もきちんと理解したうえで検討しなければなりません。ここでは、それぞれの注意点について具体的に解説します。
自由度
ロボットアームの自由度は、軸数によって決まります。回転軸は人間の腕でいうと関節の役割を持ち、数が多ければ多いほど自由度が高いのです。
自由度が高いロボットアームでは可動範囲が広くなるため、3次元空間での複雑な動きができます。一方で、自由度が低いロボットアームでは単純な動作しかできない代わりに、動作のスピードが速く精度が高い特徴があります。
そのため、一概に自由度が高いロボットアームがよいわけではなく、導入工程で求められている自由度を備えているかが重要です。
ペイロード
ペイロードとは、ロボットアームが持ち上げられる重さを示しています。可搬重量ともいい、軸数やリンクの接続方法によってロボットアームのペイロードが決まります。
例えば、垂直多関節ロボットは軸数が多いため、可搬重量はロボットアームの大きさに対して小さくなるものが多いです。一方パラレルリンクロボットは、複数のモーターでロボットの先端のみを動かす構造から、ロボットアームの大きさに対して可搬重量が大きくなる傾向にあります。
製品の重さによって、ロボットアームのペイロードを選ぶようにしましょう。
駆動方式
駆動方式は、どのようなエネルギーでロボットアームを動かしているかで異なります。一般的に普及している電動のほかに、油圧や空圧、手動などの駆動方式があります。
それぞれに特徴があり、電動であれば制御がしやすく高速の作業を得意としていたり、油圧であれば力強いパワーが特徴で重量物の運搬に向いていたりするのです。
作業に必要な重量や動作の速度、精度によって、適切な駆動方式のロボットアームを選択するとよいでしょう。
速度
速度は、ロボットアームが作業するスピードを示します。速度が速いと生産量の増加が見込め、工程間のタイムラグの発生を防げます。
しかし、速度が速ければ速いほどよいわけでもありません。スピードが前工程より速すぎると、待ち時間が発生するデメリットがあるのです。
また、作業者の安全を確保するため、ロボットアームの動作速度には制限が決められています。規定の速度を超えるものは、安全柵の設置が必須となるのです。
ほかのロボットとの兼ね合いも含め、最適な速度のロボットアームを選びましょう。
精度
同じ作業を一定に行うためには、ロボットアームの精度が重要です。精度が低いと同じ作業を繰り返し行えません。
一般的に、関節の数が多いほど精度も落ちてしまいますが、サーボモーターなどの質を上げれば精度も上がります。しかし、価格も上がってしまうのがデメリットです。
そこで、センサフィードバックを用いる方法があります。ロボットアームに搭載したセンサにより位置をフィードバックし、ロボットアームを制御するのです。これにより、低価格で十分な精度を実現します。
ロボットアームを選ぶ際には、作業に必要な精度を確保しなければなりません。ロボットアーム自体の精度で足りるのであれば問題ありませんが、予算と精度のバランスをみてセンサの搭載を検討するとよいでしょう。
ロボットアームの導入事例
ここでは、ロボットアームの活用事例を3つ解説します。自社の運用で活かすためにも、それぞれの活用事例をチェックしましょう。
株式会社アイシン
株式会社アイシンは、自動車部品の製造・販売企業です。多品種部品の組み立てラインで部品を供給するにあたって、混載している通い箱の段バラシやラインへの供給作業を多くの人手で行っていました。
そこで、株式会社Mujinの自動部品供給システムを導入。ハンドカメラを搭載したロボットアームで、一時保管用の棚と配膳用の台車への詰み分けを自動化しました。
これにより、作業人員を3分の1へ減らす省人化に成功。また、部品の取り違いがなくなり、製造品質も向上しました。
岩塚製菓株式会社
岩塚製菓株式会社は、国産米を100%使用した米菓のメーカーです。従来、米菓の生地を3つのラインに振り分ける工程を作業者が行っていました。
3つのラインは離れた場所にあるうえ、20kgを超えるコンテナを積み上げる必要があったのです。そのため、1日に9名もの作業者を確保しなければなりませんでした。
そこで、安川電機株式会社の「MOTOMAN-GP88」を導入。コンテナへの積み込みや台車と段ボール板の供給を自動化し、6名の省人化に成功しました。
キャタピラージャパン株式会社
キャタピラージャパン株式会社では、油圧ショベルのスイングフレームを溶接しています。溶接箇所が多く位置合わせに時間がかかっていたため、効率化の対応が急務でした。
そこで、株式会社神戸製鋼所の垂直多関節ロボットを導入。具体的には、4本のロボットアームによって、同時に溶接を行えるシステムを構築したのです。また、非接触レーザセンサによる溶接位置の検出精度の効率化を試みました。
これにより、従来と同等のコストでサイクルタイムの半減に成功したうえに、生産能力がおよそ1.7倍に向上しました。
ロボットアームの導入方法
ロボットアームの導入を検討しているけれど、種類が多くてどのロボットアームが適切なのかわからない方も多いのではないでしょうか。
ロボットの導入で悩んでいる場合には、ロボットSIerを活用するとよいでしょう。ロボットSIerとは、ロボットを使ったシステムの導入を提案したり、設計や組み立てを行ったりする企業です。
参照ロボットSIer(ロボットシステムインテグレータ)とは?導入事例や補助金・おすすめメーカー5選まで
「ロボファン」が紹介するロボットSIerでは、現場視察に基づいた導入計画の判断や作業の選定、導入レイアウト図の作成など、初期段階で導入診断をしっかりと行います。そのうえ、導入後のアフターサポートもあるので、安心してロボットを導入できます。
プロに任せてロボットによる自動化と効率化を実現しましょう。
まとめ
ロボットアームを導入すれば、生産性が向上したり省人化につながったりと、さまざまなメリットが得られます。一方で、ロボットアームをうまく活用するうえでは、適切なロボットアームを選ぶ必要があります。産業用ロボットアームの特徴をきちんと理解し、導入を進めましょう。
ロボファンでは、産業用ロボットアームを取り扱う優秀なロボットSlerを紹介しています。お気軽にお問い合わせください。