近年、ニュースなどで「AIロボット」を耳にする機会が増えています。しかし、具体的にどのようなものなのか、わからない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、AIロボットの概要や家庭・企業での活用事例について、わかりやすく解説します。AIロボットのメリットとデメリットなど、AIロボットの基本情報が満載です。ぜひご覧ください。
目次
AI(人口知能)ロボットとは?
AIロボットとは、AI(人工知能)という技術を使って、自ら学習できるロボットのことです。AIがセンサーなどの情報をもとに分析し、分析結果に基づいて自律的な動作を行います。
製造業や医療、介護、サービス業など、さまざまな業界での活用が期待されています。
通常のロボットとの違い
通常のロボットは、事前に設定されたプログラムに基づいて作業を行います。そのためプログラムの内容以外の動作は実行できず、思考する能力はありません。「非思考型コンピューター」と考えてよいでしょう。
一方、AIロボットは、人のように複数の情報を分析し自律的に作業を行えます。AIロボットに搭載される「ディープラーニング」などのAI技術が、試行錯誤を繰り返しながら、次第に自分の動きや反応を向上させます。AIロボットは、人との高度なコミュニケーションや、柔軟な行動が可能です。
現状のロボットの課題とは
AIロボットの普及の背景には、従来のロボット技術が抱える課題があります。ここからは、現状のロボットが持つ主な課題について解説していきます。
ロボットを扱うための教育が必要
ロボットを安全かつ適切に使用するためには、特別な教育が必要です。
具体的には、ロボットの操作やメンテナンスに関する知識や技能を学ぶために、「産業用ロボット特別教育」の受講が、法律によって義務づけられています。なぜなら、ロボットの操作やメンテナンスに不備があると、事故やケガの原因となり得るためです。そのため、業務でロボットを使用する作業員は、この教育を受ける必要があります。
このようにロボットの導入には、作業員に対する特別教育の手間がかかる課題が存在します。
ロボットの点検やメンテナンスなどの管理が必要
どんなに高性能なロボットでも、使用しているうちに部品が古くなったり、トラブルが起こる場合があります。それを防ぐため、日常的な点検やメンテナンスが欠かせません。具体的には、部品のチェックや潤滑油の確認・補充などのメンテナンスが必要です。
さらに、一定の期間ごとに工場全体の生産を止めて、ロボットの大規模な点検が必要なケースもあります。ロボットの安全な使用に必要不可欠であるとはいえ、日常的な点検やメンテナンスが作業員の負担になっているのも事実です。
イレギュラー対応ができない
ロボットが行う作業は、人があらかじめ決めたプログラムに基づいています。そのため、通常の作業はスムーズに行われますが、想定外の事態や突発的な変更が生じると、適切に対応するのは難しい場合があります。
例えば、工場の製造ラインで使われるロボットは、部品の形やサイズが変わると、それに合わせて新しい動作を学ぶ必要があります。現場の変更に合わせて、新しいプログラムを作成しなければなりません。
このように、ロボットは計画的な作業は得意でも、突然の変更やイレギュラーな状況には柔軟に対応するのが難しいという課題があります。
コストがかかる
産業用ロボットの導入には、コストが発生します。
ロボットを使うための初期費用には、ハード面とソフト面の導入コストを考慮する必要があります。ハード面の導入コストには、ロボット本体の購入代金はもちろん、周辺機器や安全設備のための費用が必要で、一方のソフト面においては技術者の育成費用が含まれます。
これらの費用を事前に計画した予算組みは、容易ではありません。
ロボット×AIだとどうなる?需要や市場規模は?
AIロボットの技術進歩によるロボット産業の市場動向の変化は、注目に値します。
2012年度には、産業用ロボットを中心に9,000億円程度だった市場が、2035年には9.7兆円に拡大すると予測されています。この予測の背景にあるのは、少子高齢化による労働力の減少や、サービスの質を求める社会のニーズです。

出典ロボット利用の意義・必要性・取りまく環境/国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
一方、内閣の掲げる「ムーンショット目標」では、2050年までに自ら学び、行動し、人と共生するロボットの実現が目標として掲げられています。この目標では、少子高齢化への対策や、人の活動領域を拡大する目的から、自律的に動くAIロボットの開発が不可欠とされています。
これらの動向を背景に、私たちの生活やビジネスにおいて、AIロボットが更に身近な存在となることは間違いないでしょう。
参照ロボット利用の意義・必要性・取りまく環境/NEDO 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
AIロボットは現状どんなものがある?
近年、AIを搭載したロボットをさまざまな場面で目にする機会が増えてきました。例えば、店頭や受付で来店者を案内するロボットや、レストランでの配膳を行うロボットなどを目にした経験のある方も多いのではないでしょうか。
具体的には、ヒト型コミュニケーションロボットの「Pepper」やネコ型配膳ロボット「BellaBot」などが広く知られているAIロボットです。これらのロボットは、私たちの暮らしに溶け込むデザインを持ちながら、業界の人手不足解消に一役買っています。
また、AIロボットはペットや家族の一員としての役割も果たします。例えば犬型ロボット「aibo」や家庭用ロボット「LOVOT」は、愛着の湧くコミュニケーションロボットとして、私たちを癒し楽しませてくれる存在です。
AIロボットのメリット・デメリット
社会のニーズともマッチし、日進月歩の進化を続けるAIロボットには、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。ここからは、具体的なAIロボットのメリット・デメリットについて解説します。
メリット
AIロボットを導入するメリットには、主に次のような点が挙げられます。
- ティーチングなどのコスト削減
- 人が点検する機会が減る
- 自分で判断でき、処理範囲が広くなる
- IoTと連携で膨大なデータを学習できる
詳しくみていきましょう。
ティーチングなどのコスト削減
従来のロボットに対しては、専門のエンジニアが動作を教え込む「ティーチング」を行う必要がありました。ティーチングには、高度な専門知識や技能が求められ、教育のための時間や費用がかかっていました。
一方で、AIロボットは、ティーチングの手間を大きく減らせます。なぜなら、AIロボットは自己学習機能を持ち、新しい動作やタスクを自分自身で学習するためです。そのためAIロボットでは、作業員への教育費用などのティーチングのコストを大幅に節約できるメリットがあります。
人が点検する機会が減る
従来のロボットは、毎日の点検が必要で、突然の故障や不具合が発生するリスクがありました。
一方でAIロボットは、自分の動きや音、振動の情報を収集し、異常を自動で発見できます。このようなAIの「予知保全」という機能のおかげで、作業員が毎日点検する機会が大幅に減少します。そのためAIロボットでは、労働力の節約ができるうえに、事前にトラブルを防げるため作業効率の向上も期待できます。
自分で判断でき、処理範囲が広くなる
従来のロボットは、普段とは違う状況や新しいタスクにはすぐに対応できませんでした。一方でAIロボットは、さまざまなデータから判断し、自動的に動作可能です。
例えば、製造工程で部品の形や大きさが多少変わっても、AIロボットはそれを見分けて、適切に対応できます。これは、AIが情報を学習して、自分で最良の判断を下す能力を持っているからです。AIロボットは多様な状況にも柔軟に対応できるため、作業の処理範囲が広くなり、効率が大幅に向上します。
IoTと連携で膨大なデータを学習できる
AIロボットは、IoTとの連携でさまざまな情報を受け取れます。
従来型のロボットは、学習機能がないため指示通りの繰り返し作業しかできません。一方でAIロボットは、IoT機器からの情報を取り込み、膨大なデータを学習できるため現場環境に合わせて柔軟にタスクをこなせます。例えば、製造現場では、AIロボットがIoTの情報を解析して作業機器の故障を予知し、作業効率の向上を実現しています。
つまり、AIロボットとIoTの組み合わせにより、私たちの生活や仕事がさらに便利で効率的になると期待されます。
デメリット
AIロボットの導入には多くのメリットがある一方、考慮すべきデメリットも存在します。具体的には、以下のとおりです。
- AIによるミスや事故の責任の所在
- 人間がAIの判断を理解できない可能性がある
AIロボット導入のデメリットについて解説します。
AIによるミスや事故の責任の所在
AIロボットによって生じた事故やトラブルには、「誰の責任なのか」がはっきりしないという問題がともないます。
具体的には、AIを搭載した自動車やロボットが事故を引き起こした場合、そのミスは車やロボットを持っている人のせいなのか、それともロボットを開発した会社のせいなのか、現在の法律では明確には定められていません。
このような状況は、AIの技術を使った製品やサービスを使う際のデメリットといえます。
人間がAIの判断を理解できない可能性がある
AIロボットを使用する際、AIの判断や考え方を人間が完全に理解できない可能性があります。例えば、医療の現場でAIが診断を下した結果、人命に関わるトラブルが発生した場合、患者や医師はAIがその結果にたどり着いた理由や考え方を知りたいでしょう。
しかし、ブラックボックスとなっているAI技術も多く、AIの考え方や判断の背景を明確にできないため、原因追及が困難となる可能性があります。
このように、AIの思考プロセスが不透明になってしまうケースがあるのは、デメリットの1つといえるでしょう。
AIロボットの活用事例
AIロボットは、家庭やビジネスにおいて活用され、私たちの生活を豊かにしています。ここからは、実際の活用事例を紹介します。
家庭での活用事例
家庭内におけるAIロボットは、私たちの生活をより快適に、そして心温まるものに変えるためのコミュニケーション相手として、その役割を果たしています。日常的な会話から、癒しを求める瞬間まで、家庭用AIロボットは私たちに新しい体験を提供してくれます。
ここからは、家庭でのAIロボットの活用事例をみていきましょう。
動物アレルギーの方でも親しめるペットロボット:Moflin
「Moflin(モフリン)」は、小さな手のひらサイズのペット型のロボットです。そのふわふわとした毛並みとかわいらしい動きが、人々の心を温かくします。普通の玩具とは異なり、Moflinは「感情」を持つとされています。つまり、まわりの環境や、飼い主とのコミュニケーションによって、その日の気分や仕草が変わるのです。
さらに、飼い主との毎日の交流を通じて、Moflinは成長していきます。それにより、飼い主の接し方を学び、まるで本物のペットが懐いてくるように、飼い主に寄り添う姿が見られるようになります。動物アレルギーの方でも安心して飼えるのも嬉しいポイントです。
身近なパートナーになるコミュニケーションロボット:unibo
「unibo」(ユニボ)は、家庭での新しいコミュニケーションパートナーとして登場したAIロボットです。ユニボが持つ高度な顔認識技術により、家族の顔や好みをきちんと覚え、相手に合わせた反応を示します。加えて、予定のリマインダーや天気の情報も教えてくれるため、日常生活がとても便利になるでしょう。
さらにユニボをIoT家電と接続すれば、音声で家電の操作も可能です。また、離れた場所に住む家族とも、ユニボを通じてビデオ通話ができる魅力もあります。ユニボは、私たちの日常をより豊かにする存在として、多くの家庭での活躍が期待されます。
柔軟な対話が可能なヒューマノイドロボット:ロボホン
「ロボホン」は、身長約19.8センチと手のひらサイズで、二足歩行が可能なヒューマノイドロボットです。モバイル通信に対応し、電話やメール、カメラなどの機能を持っています。
また挨拶やしりとり、伝言機能など、多彩なアクションが魅力です。例えば、留守番をする家族に伝言がある場合には、LINEアプリを通じてロボホンへ送信したメッセージを、楽しい雰囲気で家族に伝えてくれます。ロボホンは、家族のコミュニケーションを豊かにする心温まる存在です。
企業での活用事例
AIロボットは、ビジネスシーンにおいて、各業界の課題を解決するために役立てられています。仕事の効率向上や作業の負担軽減など、AIロボットが解決する課題は多様です。
ここからは、いくつかの業界で使用されている革新的なAIロボットの実例を紹介します。
ピッキング作業の自動化を実現:ラピュタPA-AMR
「ラピュタPA-AMR」は、物流倉庫で使われるAIロボットです。棚に陳列されたなかから必要な商品を選び取るピッキング作業を補助し、作業の効率を大きく向上させるために設計されています。
ラピュタPA-AMRは、クラウドプラットフォーム上で管理され、複数のロボットが協働で動き、荷物の運搬を効率よく行います。
佐川グローバルロジスティクスでは、ラピュタPA-AMRを11台導入し、物流倉庫内におけるピッキング作業の自動化に成功し、導入前よりも2倍程生産性を向上できました。
大型ホテルの清掃内製化に貢献:Whiz
「Whiz」は、業務用屋内掃除ロボットとして世界売り上げNo.1を誇る製品です。
ホテル日航奈良では、床掃除などの清掃体制の一部を機械化するためにWhizを採用。現在ロビー・客室廊下・宴会場などの床清掃でWhizを活用し、作業員は消毒作業や手間のかかるシミ取りなどの細かい作業に専念できるようになりました。
ミニトマトの自動収穫:FARO
近年、農業の現場で就農者が減少しているなか、農作業の助けとして注目されているロボットが「FARO」です。FAROは、アームの先端と筐体に付いた計3台のカメラで得られた画像から、AIがミニトマトの房を検出し、成熟度も判断しながら自動でトマトを収穫します。大規模なミニトマト農場における労働力不足解消に役立つ存在です。
加えて、将来的にほかの作物の収穫にも使えるよう、部品を組み替えられる設計になっています。FAROは、農業の未来を支える重要な存在として期待されています。
高齢者福祉施設でのコミュニケーションを促進:PARLO
人手不足や職員の業務負担が課題となっている介護現場において、介護ロボット「PARLO」が注目されています。PARLOは人のような形をしており、高齢者福祉施設でのコミュニケーションを助けるための機能を持っています。
具体的には、天気やニュース、健康や食べ物についての話など、さまざまな話題で高齢者とおしゃべりを楽しむほか、ゲームやダンス、クイズなどの活動も提案します。テレビとは違い、PARLOは双方向でのコミュニケーションができるため、高齢者の認知症予防や孤独感の解消につながると好評です。
料理提供の効率を向上:Lanky Porter
「Lanky Porter」は、飲食店向けの自動配膳ロボットです。AI技術を用いて目的地までの距離を計算し、最適なルートでお客さまのもとへ効率的に配膳します。
飲食店の道楽やねこん家では、コロナ禍においてLanky Porterを導入した結果、スムーズな運行と操作の容易さを実感したといいます。またお客さまからも非常に好評で、提供効率の向上やスタッフの負担軽減など、店舗運営において多くのメリットをもたらしました。
まとめ
AIロボットの技術は、私たちの生活やビジネスにおけるさまざまな場面での活用が期待されています。また、AIロボットの技術の進化は目まぐるしく、情報は日々更新されています。
未来の生活やビジネスを充実させるためにも、AIロボットの動向や最新情報に注目し、適切な知識を身につけていきましょう。私たちの日常生活を豊かにするAIロボットの動向から、今後も目が離せません。

