ロボットハンドメーカー25選!導入事例や選ぶ際の注意点

近年、工場などの製造現場では業務効率化のためにロボットハンドが活用されています。
今回は、ロボットハンドの種類や使用用途、導入する際の注意点を解説します。
本記事は、自社のニーズに合わせたロボットハンドを選ぶ際の参考になる内容が盛りだくさんです。ロボットハンドの導入を検討している企業の皆さまは、ご覧ください。

ロボットハンドとは

ロボットハンドとは、ロボットアームの先端に取り付けられていて人間の手のような役割をする機構です。

人間の手と同じように5本の指があるものもありますが、2本や3本で設計されているものもあります。また、ロボットハンドといっても把持できるものだけではなく、吸盤で吸引して持ち上げるものや組み立て作業が行えるようにネジ締めが付属しているものもあります。このように、ピッキングやハンドリングする内容に合わせて形状も変わるのです。

現在では、1台で複数の製品に対応できるように、汎用的知能ロボットコントローラと接続できるロボットハンドも開発されています。

ロボットハンドに関して詳しくは下記記事をご覧ください。

ロボットハンドロボットハンドとは?種類や選ぶ際の注意点・活用事例を詳しく解説

ロボットハンドの種類と機能

ロボットハンドには「把持ハンドと吸着ハンド」の2種類があり、それぞれ機能が異なります。これから、詳しく解説します。

把持ハンド

把持ハンドとは、人の指のように対象物を挟んで掴む機能を有する機構です。関節部についたセンサーなどによって指先の摩擦や圧力を推量し、把持力を調整しています。
把持ハンドの指の本数はさまざまで、2本や3本が一般的ですが、4本以上のタイプもあります。

さまざまな形状や重さの物を運べるメリットがある一方で、掴む際には対象物に対して力がかかるため、ダメージが入るデメリットがあります。また、機構が少し複雑なため、コストが高くなりがちです。

把持ハンドはエアシリンダーやモーターにより一定速度を保てるため、繰り返し動作に優れることから、主に大ロット生産に向いています。

吸着ハンド

吸着ハンドとは、空気の吸い込みや磁力により物を持ち上げる機能がある機構です。コンプレッサーを使わない吸着ハンドもあり、狭い場所にも設置可能です。

吸引タイプの吸着ハンドは、把持ハンドのように局所的に力が加わることがないため、対象物が傷つきにくいメリットがあります。

ただし、吸着部が水や油などで汚れていると吸着力が弱まり、対象物を落としてしまう危険性があります。さらに、対象物に凹凸や穴があると空気が抜けるため、うまく吸着できません。

一方、磁力タイプの吸着ハンドの場合は、強力な電磁力により対象物に凹凸や穴があっても吸着できます。ただし、非鉄金属では使えません。

吸引・磁力どちらのタイプにも向き不向きがあるため、対象物に合わせて適切なハンドを選ぶのがポイントです。

ロボットハンドの導入事例

ここでは、ロボットハンドの活用事例を3つ解説します。自社の運用を活かすためにも、それぞれの活用事例をチェックしましょう。

アイコクアルファ株式会社

アイコクアルファ株式会社は、愛知県にある輸送用機械器具を取り扱う会社です。

ロボットハンドの導入前は、自動車部品の超精密金属加工工程において、工作機械への材料投入や取り出しを手作業で行っていました。作業の高速化のためロボットハンドの導入を検討していましたが、工業機械内部での位置決めが非常に難しいなどの課題がありました。

これらの課題をクリアするため、ハンドの動かし方を工夫したり、小スペー ス・低コストのロボットストッカーを開発したりして、自動化を実現したのです。結果、労働生産性が3.2倍になり、流出不良も減りました。

リサイクル処理施設

あるリサイクル処理施設では、飲料缶のスクラップを積載する際にロボットハンドが取り入れられています。

リサイクル活動が進み空き缶の回収量が増えていますが、積載作業はワークが重いうえにワークエッジが鋭利で危険であるなど、非常に過酷な作業でした。そのうえ、ロボットハンドの導入には、さまざまな課題がありました。

まず、ワークの寸法バラツキが非常に大きいことが判明したため、搬送・積載作業に悪影響を与えないようにするシステムを考案しました。

また、空パレットの搬入や充パレットの取り出し作業における動線と作業性を考慮し、形状が安定しない製品を確実に把持するハンド装置構想を提案したのです。

さらには、製品の寸法にバラツキがあっても積載作業を継続できるように、 ロボットハンドにタッチセンサ機能を搭載し、パレット上の荷高さを計測して製品の積載位置を補正する機能を搭載しました。

これらにより、空き缶の分別とパレットへの積載を自動化に成功。作業者を1.5人省人化し、労働環境を大幅に改善できました。

炊飯事業者

ある炊飯事業者でも、立体型IH炊飯システムを動かすためにロボットハンドを使っています。

IH炊飯は従来のガス炊飯と異なり、炊飯プロセスの上部に空間があります。そこで炊飯処理能力を上げるために、空いたスペースを使って株式会社安川電機のロボットハンドを導入し、釜の搬送を自動化しました。

試行錯誤のうえで、従来比の57パーセント減で省スペース化を実現。作業動線の簡素化や搬送作業の確実化、安定した炊飯による品質向上に成功し、食品機械業界で注目を集めています。

ロボットハンドを選ぶ際の注意点

ロボットハンドを選ぶ際には、用途に合ったものかどうかをよく考えなければなりません。そのためには、以下4つのポイントに注意しましょう。

  • 把持力・吸着力
  • 材質
  • 精度
  • 信頼性

把持力・吸着力

1つめの把持力と吸着力です。選ぶ際には、ロボットハンドが持てる製品の重さを必ず確認しましょう。特に重たい製品を搬送したい場合には、把持力の高いロボットハンドを選ばなければなりません。

また、吸着型のロボットハンドを導入する場合にも注意が必要です。製品の材質や表面の形状に合わせて、しっかりとくっつくロボットハンドを選びましょう。

材質

2つめは材質です。特に豆腐などのやわらかい製品を搬送する際に重要です。ロボットハンドの材質が硬いと、傷つけてしまう恐れがあります。そのため、柔らかい製品を扱う場合には、エラストマー製のロボットハンドを選ぶなど、製品の種類に合わせましょう。

精度

3つめは精度です。ロボットハンドの制御能力を確認しましょう。小さな製品を把持するなど細かい作業が求められる場合には、特に高い精度が必要です。

信頼性

4つめは信頼性です。ロボットハンドが製品をピッキングなどをする際には、負荷がかかります。信頼性の低いロボットハンドを導入してしまうと、高い頻度でメンテナンスや修理が必要となります。そのため、長期間にわたってロボットハンドの把持力や吸着力を保ち続けるためにも、信頼性があるロボットハンドを選びましょう。

おすすめのロボットハンドのメーカー25選

おすすめのロボットハンドのメーカー25社を、詳しく紹介していきます。

OnRobot Japan株式会社

OnRobot Japan株式会社は、協働ロボットやネジ締めロボットなどに強みを持つメーカーです。
同社の製品は、デンソーやファナックなどさまざまなロボットメーカーの製品に接続でき、1台のロボットハンドで複数のワークを実行できるため、費用対効果が高いです。また、安全に関する有効性を担保する「TUV認証」を受けている製品では、安全シールドが標準で装備されているため、安全面も優れています。

iCOM技研株式会社

iCOM技研株式会社は、小売や物流などのさまざまなシーンのピッキング作業で使えるロボットハンドを販売する企業です。同社が取り扱うTHK製のピッキングロボットハンド「PRS-A」は、箱型や紙などさまざまな形状の製品をキャッチできるため、幅広いラインの効率化につながります。

安藤株式会社

安藤株式会社は、やわらかなグリッパーを持つロボットハンドを販売している企業です。
同社の「Aハンド」は、柔らかく掴みにくいものでも把持できます。また、ユニバーサルロボットやファナックなど主要ロボットメーカーに広く対応しているため、再設計せずに取り替えるだけで利用可能なケースもあります。

シナノケンシ株式会社

シナノケンシ株式会社は、「あらゆるものの把持に挑戦」をスローガンに電動ロボットハンド開発の第一線で活躍するメーカーです。
同社の「電動ロボットハンド」は、電動式で人の手のような柔軟な動きができるため、柔らかいものから硬いものまで1回で掴めます。また、把持力を可視化できるため、微調整を行うだけで生産ラインでの運用が可能です。

株式会社スター精機

株式会社スター精機は、eins(アインツ)と呼ばれるロボットハンド・ハンド用パーツ専門ショップを持つメーカーです。
einsでは、吸着パッドやシリンダー、軽量フレームなどのロボットハンドパーツを1,400種類以上取り揃えており、ロボットハンドに必要な部品が網羅されています。また、ロボットハンドの製作実績が13,000点以上と豊富で、安心して導入できます。

ダブル技研株式会社

ダブル技研株式会社は、汎用的な多指・多関節型ロボットハンドを販売しているメーカーです。
同社のロボットハンドの「D-HAND」は3本指と5本指タイプがあり、劣駆動機構を採用し軽量かつコンパクトな設計となっています。ナットやペットボトルなど、さまざまな把持にも対応しています。

株式会社Thinker

株式会社Thinkerは、ロボットハンドに活かせるセンサーを開発するメーカーです。
同社が開発した近接覚センサーの「TK-01」は、独自のセンシング技術を搭載し、鏡面や透明な対象物の検知が可能で、ロボットハンドのさらなる活用領域の拡大が期待されています。

CKD株式会社

CKD株式会社は、電気やエアで掴む・真空で吸着するロボットハンドを取り揃えているメーカーです。
同社の「DLSH」は、2本指タイプの電動グリッパで、駆動機構にスプリングを採用しています。スプリングによって、対象物に対する衝撃の低減ができるメリットがあります。

株式会社北川鉄工所

株式会社北川鉄工所は、2爪や3爪平行、省段取りグリッパのロボットハンドを販売しているメーカーです。
同社では工作機器のチャック製造で培った技術を活かし、対象物の把持部の寸法が測定できるロボットハンドも開発しています。

ニッタ株式会社

ニッタ株式会社は、食品製造向けのロボットハンドを提供するメーカーです。
SOFT matics™」は、対象物のばらつきの吸収や真空度の調整による自由な把持により、グリッパを滑らかに制御可能で、からあげなどの不定形なものやパン・トマトなどのつぶれやすいものでも掴めます。

シュマルツ株式会社

シュマルツ株式会社は、真空技術を活かした多種多様なロボットハンドを扱うメーカーです。
同社の「真空エンドエフェクタVEE」は吸着パッドを自由に組み合わせられるモジュール式のロボットハンドで、複数の対象物に合わせて柔軟に組み立てられるため、製造やロボットにかかるコストを削減できます。

SMC株式会社

SMC株式会社は、空圧機器分野で国内シェアの65%を誇るメーカーです。
同社の協働ロボット用のエアグリッパ「JMHZ2-X7400B」は、小型にもかかわらずエア駆動により高い把持力を発揮します。

鍋屋バイテック会社

鍋屋バイテック会社は、鋳物で培った伝統技術と新しい技術をもとに国内外で事業展開している企業です。
同社が取り扱うZIMMER製の協働ロボットハンド「HRC-01」は、安全性の高い丸みを帯びたフォルムと、最大820ニュートンもの高い把持力が特徴です。

因幡電機産業株式会社

因幡電機産業株式会社は、協働ロボットなどの製品を企業のニーズに合わせて提案する企業です。
同社ではロボットセンターを開設しており、活用セミナーや効果検証のためのワークテスト、導入トレーニングなど、協働ロボットの導入に必要なさまざまなサービスを提供しています。

株式会社ニューエラー

株式会社ニューエラーは、ファナックや川崎重工、三菱電機のロボットに対応した電動空気圧ハンドを開発するメーカーです。
動作ストロークを記憶できる「ELCT1-100-20-CRX」など、全10種類のロボットハンドがあります。

ピアブ・ジャパン株式会社

ピアブ・ジャパン株式会社は、真空システムを利用したロボットハンドやコンベアを提供するメーカーです。
同社の真空エジェクターユニットの「piCOBOT」は、汎用の電気インターフェースだけではなく、オプションでISO 9409-1規格に準拠したサイズも利用可能で、小型産業用ロボットとの連携も容易です。

古川機工株式会社

古川機工株式会社は、型崩れしやすいゲル状の対象物のハンドリング技術を持つロボットハンドメーカーです。
同社の「SWITL(スイットル)技術」は対象物の下にベルトを差し込んで載せる仕組みで、ケチャップやマヨネーズなどの形を崩さずに、ほかの場所へ移動できます。食品製造や再生医療開発現場など、幅広い分野に使われています。

Robotiq

Robotiqは、2本・3本指や真空タイプなど多種多様なロボットハンドを開発し続けているメーカーです。
Robotiqのロボットハンドは付属パッケージの「Plug+Play」を使うと、エンジニア以外の方でも簡単に設定や操作ができます。

株式会社コスメック

株式会社コスメックは、兵庫県神戸市に本社を置き、アメリカやヨーロッパにも営業拠点を持つメーカーです。精密機器や油圧機器の設計から製造、販売まで手がけています。

ロボットハンドにおいては、高い把持力を持つ「エアシリーズ」を展開しています。

興和オプトロニクス株式会社

興和オプトロニクス株式会社は、愛知県に本社を置くメーカーです。垂直多関節ロボットを利用した、省力化ロボットラインの設計や製作を得意としています。

ロボットハンドに電動ドライバーを持たせた「ネジ締めユニット」や、ロボットハンドによって部品の組み立てや挿入を行う「部品組み立てユニット」を取り扱っています。

株式会社MUJIN

株式会社MUJINは、東京都に本社を置くメーカーです。従来、技術的に難しかった物流や製造現場の作業を自動化する、Mujinコントローラは独自のコア技術「MujinMI」を搭載したロボットハンドを提供しています。

MujinMIにより、ロボットが自律的に考えて臨機応変に作業できるようになったのです。

オムロン株式会社

ヘルスケア事業を手がけるオムロン株式会社は、事業を通じて社会的課題を解決し、よりよい社会の創造を目指すメーカーです。

電動グリッパーエアグリッパーマグネットグリッパーなどのロボットハンドを取り扱っており、精密加工などに役立てられています。

アスカ株式会社

アスカ株式会社は、海外製品のロボットハンドの取り扱いや、1~5軸まで対応可能な直交ロボットの独自開発など、幅広くロボットシステム事業を展開しているメーカーです。

ロボットハンドにおいては、DOBOT製の電動グリッパーの「DH AGシリーズ」や「DH PGCシリーズ」を提供しています。

THK株式会社

THK株式会社は、ロボットハンドによるピッキングや搬送の自動化を得意としています。ピッキングロボットハンドシステムの「PRS」によって、ピッキングを自動化し、物流業界の人手不足の解消を目指しています。

PRSのハンドにはカメラが搭載されており、棚の正面からピッキングが可能なため、棚のレイアウト変更なく簡単に導入可能です。

株式会社荻野製作所

株式会社荻野製作所は、省力化機械と職場改善のノウハウを活かして、顧客のニーズに合わせたロボットハンドの設計や製造をしています。

シングルチャックやダブルチャックなどのロボットハンドエフェクターを取り扱い、ロボットによって工場の自動化や省力化の実現を目指しています。

ロボットハンドの導入方法

ロボットハンドの導入を検討中の方のなかには、種類が多くてどのロボットハンドが適切なのかわからない方も多いのではないでしょうか。

ロボットハンドの導入で悩んでいる場合には、ロボットSIerを活用するとよいでしょう。ロボットSIerとは、産業用ロボットや適切なロボットハンド導入を提案したり、組み立てを行ったりする企業です。

参照ロボットSIer(ロボットシステムインテグレータ)とは?導入事例や補助金・おすすめメーカー5選まで

ロボファン」では、数あるロボットSIerのなかから、各企業に最適なロボットSIerを紹介します。ロボファンで紹介しているロボットSIerでは、現場視察に基づいた導入計画の判断や作業の選定、導入レイアウト図の作成など、初期段階で導入診断をしっかりと行います。そのうえ、導入後のアフターサポートもあるので、安心してロボットハンドを導入できます。

プロに任せて適切なロボットハンドを導入し、自動化と効率化を実現しましょう。

まとめ

ロボットハンドとは、ロボットアームの先端に取り付ける人間の手のような役割をする機構で、把持ハンドと吸着ハンドの2種類があります。

ロボットハンドはそれぞれ、溶接や塗装、組み立てなど、さまざまなシーンで活用されています。

また、ロボットハンドのメーカーは何社もあり、汎用的な製品を持つ会社や真空に強みを持つ会社などさまざまです。

今回紹介したメーカーを参考に、自社に最適なロボットハンドを導入しましょう。