日本の人手不足を解決するためには、現在の社内体制の見直しやロボットの導入をする必要があります。しかし、具体的にどのような社内体制を見直せばいいのか、どのロボットを導入すれば人手不足の解消につながるのかがわからない方も多いでしょう。
今回は、日本の人手不足の原因や解決策、解決できた企業事例についてわかりやすく解説します。この記事を読めば、人手不足の解決策を把握できるため、自社の人材不足の軽減につながるでしょう。企業の皆さまは、ぜひ最後までご覧ください。
日本の人手不足の原因とは
日本の人手不足の原因として、以下の3つが挙げられます。
- 少子高齢化
- 非正規雇用の増加
- 採用コスト不足
日本企業の多くが、慢性的な人手不足に悩まされています。人手不足を解消するためには、原因を把握したうえで適切な対策を実施しなければいけません。ここでは、日本の人手不足の主な原因について具体的に解説します。
少子高齢化
日本の人手不足の大きな原因は、少子高齢化です。働き手となる15〜65歳の人数は年々減少し続け、圧倒的に人材の供給が足りていません。
また厚生労働省にて「2025年には、75歳以上が全人口の約18%となり、2040年には65歳以上が全人口の約35%になる」と推測され、今後も人手不足に歯止めがかからないことが予想されます。
非正規雇用の増加
厚生労働省によると、非正規雇用の割合は2010年以降増加が続いており、2020年以降では減少しているものの、2022年は増加しています。2022年の非正規雇用の割合は36.9%で、2010年と比較すると2.5%も上昇しています。
非正規労働者が増える一方で、企業は主に労働力が安定して見込めるフルタイムの正社員を求める傾向が強く、需要と供給の不一致が人材不足を生み出しているといえるでしょう。
働き方の多様化からパート・アルバイトの割合が増加し、正社員を求める企業において人手不足が進んでいるのです。
採用コスト不足
採用コストが不足しているために、新たな人材を確保できず、人手不足に陥る企業も少なくありません。
近年就活市場の多様化から、合同説明会以外にも自社インターンシップやランチ会など、さまざまな採用機会を設ける必要があり、それにともない採用コストが年々増加しています。
実際のところ、以下のように就職白書2020では、新卒・中途採用どちらにおいてもコストが上がっていると報告されています。
採用区分 | 2018年度 | 2019年度 |
---|---|---|
新卒 | 71.5万円 | 93.6万円 |
中途 | 83万円 | 103.3万円 |
参照就職白書2020/株式会社リクルート
2018年から2019年度にかけて新卒採用では、約20万円も採用コストが増加しました。今後も採用コストは上昇することが予測されるため、採用コストに余裕がない企業はますます人手不足に陥るでしょう。
近年の人手不足の推移
総務省が2023年5月に実施した「労働力調査」によると、就業者数が6,745万人で2022年同月と比較して15万人増加しており、日本では10ヵ月連続で増加しています。
しかし、業種別の就業者数を確認すると、人手不足に悩まされている業界が多く存在しています。以下の業界で、就業者の減少が見受けられました。
業界 | 農業・林業 | 運輸業・郵便業 | 学術研究・専門・技術サービス業 | 教育・学習支援業 | 医療・福祉業 | サービス業 |
---|---|---|---|---|---|---|
実数 | 193万人 | 347万人 | 260万人 | 341万人 | 926万人 | 468万人 |
前年同月比増減 | -14万人 | -5万人 | -2万人 | -10万人 | -19万人 | -17万人 |
参照労働力調査/総務省統計局
上記の業界では、前年同月と比較して就業者数が2〜19万人ほど減少し、特に「医療・サービス業・農業分野」の減少数が大きいことがわかります。
感染症の影響による人手不足が回復した業界が多いなかで、サービス業など一部の業界では人手不足の状況が加速しています。
人手不足の業界ランキング
企業の人手不足に関する調査にて、人手不足の割合は正社員が51.4%で、非正規社員は30.7%と、雇用形態によらず人手不足に陥っていると報告されています。
2023年度における正社員の人手不足割合のランキングは、以下の通りです。
順位 | 業界 | 人手不足割合 |
---|---|---|
1 | 旅館・ホテル | 75.5% |
2 | 情報サービス | 74.2% |
3 | メンテナンス・警備・検査 | 67.6% |
4 | 建設 | 65.3% |
5 | 人材派遣・紹介 | 64.3% |
また、非正規社員の業界ランキングは、以下のようになっています。
順位 | 業界 | 人手不足割合 |
---|---|---|
1 | 飲食店 | 85.2% |
2 | 旅館・ホテル | 78.0% |
3 | 飲食料品小売業 | 58.7% |
4 | 人材派遣・紹介 | 58.3% |
5 | 各種商品小売 | 56.9% |
参照人手不足に対する企業の動向調査/株式会社帝国データバンク
正社員・非正規社員ともに、旅館・ホテルが上位にランキングしています。この背景として、新型コロナウイルスの感染拡大により、一時的に悪化していた需要が急回復したことが挙げられるでしょう。
人材不足が企業に与える影響
人材不足が企業に与える影響として、以下の3つが挙げられます。
- 事業の縮小
- 職場環境の悪化
- 能力育成機会の減少
人材不足に企業が陥ると、さまざまな悪影響を与えます。人材不足による悪い影響を事前に把握したうえで、自社にとって適切な解決策を実施しましょう。
事業の縮小
人材不足が企業に与える最も大きな影響として、事業の縮小が挙げられます。時間外労働などにより既存人材の稼働率を上げたとしても、社員1人当たりの業務処理能力には限界があるからです。
事業の縮小が続けば、競合他社に差をつけられ自社の業績が悪化し、競合へ貴重な人材を流出させてしまうことになるでしょう。
職場環境の悪化
企業が人材不足に陥ると、職場環境が悪化します。人手不足の企業では、少ない人数で多くの業務を回さなければいけないため、有給休暇の取得が困難です。その結果、社員が気軽に休めない環境に不満を抱き、さらなる人材の流出につながります。
また、職場環境の悪化は社員のパフォーマンス低下につながるため、提供サービスの質が悪化し、顧客満足度が低下してしまう恐れもあります。
能力育成機会の減少
人手不足の企業の場合は、通常業務に手一杯であるため、能力育成機会が減少してしまう傾向にあります。社員の育成機会が不足すると、向上心の高い社員がスキルを得られないことに不満を感じ、転職を促してしまう可能性があります。
人手不足の解決策
人材不足の解決策として、以下の5つを解説します。
- 人事の見直し
- 福利厚生の見直し
- 人材育成の強化
- 多様な人材の採用
- AI・ロボットの活用
人材不足を解決するためには、さまざまな方法があります。ここで解説した解決策を理解し、自社に適切な方法を実践しましょう。
人事の見直し
人材不足を解決したいのであれば、人事制度を見直す必要があります。待遇や職場環境の改善をしないと、人材が流出する恐れがあるからです。
例えば、会社に職能資格制を導入すれば、年功序列ではなく職務遂行能力が高い人ほど評価される会社になるため、能力が高い人材の離職防止につながります。
また人事制度を再構築する際は、どのような制度にしたら働きやすくなるのかを自社の社員に対してアンケートを取ると、現場社員に寄り添った適切な見直しができます。
福利厚生の見直し
人材不足を解決するためには、福利厚生の見直しにも取り組みましょう。具体的には、以下の福利厚生に積極的に取り組むと他社との差別化につながり、人材不足の解決が期待できます。
福利厚生の種類 | 具体的な施策 |
---|---|
通勤・住宅関連 |
|
育児・介護関連 |
|
社内・レクリエーション関連 |
|
福利厚生が充実すれば社員の働きやすさに直結するため、離職率が低下しやすくなります。
人材育成の強化
人材育成の強化を図れば、個々が対応できる業務範囲が広がるため複数の業務を1人で担えるようになり、人手不足が解消しやすくなります。
人材育成の強化の1つとして、「学び直し制度」の導入を検討するとよいでしょう。学び直し制度とは、1ヵ月ごとなどの決められた周期で社員が職業上で必要な知識や技術に対する教育を受ける仕組みです。
学び直し制度を活用すれば時代に即した技術や知識が取得できるため、さまざまな事業で活躍できる社員を育成できます。
多様な人材の採用
人手不足を解決するためには、多様な人材を採用するとよいでしょう。例えば、未経験者や高齢者、在留外国人など多様な人材を受け入れることで、従来より応募者が増えるため、人手不足の解消につながります。
AI・ロボットの活用
AI・ロボットを活用すれば、人手不足の解決につながります。AIやロボットを導入すれば、単純作業を人間がやる必要がなくなるため、人手不足解消につながるからです。
また、AI・ロボットの活用により、社員の業務負担の軽減も可能です。例えば、飲食店で、配膳ロボットを導入すると、配膳・下げ膳業務を自動化できるようになるため、ホールスタッフの移動回数が減り、体力的な負担を軽減できます。
人間が行う業務量を少なくするとともに、人手不足の解消につなげるためにも、AIやロボットは積極的に活用するべきです。
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人手不足解消に成功した企業事例
人材不足解消に成功した企業事例として、以下の3つを解説します。
- ダイバーシティ経営の体現(日高工業株式会社)
- カバー体制の見直しにより幅広い人材を獲得(株式会社グローバル・クリーン)
- 物流ロボットの導入で省人化の成功(日本通運株式会社)
ダイバーシティ経営の体現(日高工業株式会社)
日高工業株式会社は、自動車部品の高強度化や軽量化の実現につながる「熱加工処理」を手がけている会社です。
日高工業は人手不足を解消するために、ダイバーシティ経営を体現しています。ダイバーシティ経営とは、人種や国籍、年齢など多様な属性の違いを活用し、個々の能力を最大限に引き出して付加価値を生み続ける経営方法です。
日高工業は自動車部品を加熱する温度は700度以上といわれるほど熱気にあふれる職場であるため、従業員の採用や定着が難しく、技能継承に課題を抱えていました。
従業員が156名いるなかで、女性が49名、外国人は31名。従業員の最年少は19歳、最年長は76歳と、年齢・性別・国籍を問わず幅広い人材が活躍しています。
ダイバーシティ経営を導入して幅広い年齢層の従業員を雇用した結果、シニア世代から若手への技術伝承がしやすくなり、人手不足の解消につながっています。
カバー体制の見直しにより幅広い人材を獲得(株式会社グローバル・クリーン)
ビルメンテナンス事業を展開するグローバル・クリーンでは、事業に対して「きつい」「給料が低い」などのマイナスイメージを持たれてしまい、人材が集まらず、人手不足に悩まされていました。
人手不足を解消するために、急な欠員が現れても現場が回る「独自のカバー制度」を導入しました。例えば、カバー制度の一つである子育て支援対策では、社内にベビーベッド付きの保育スペースの確保や、専属制から複数の現場を担当する形式へ変更するなど、子どもがいる社員の欠員分をいつでもカバーできる環境づくりに貢献しています。
カバー体制を充実させたことで、管理職の6割が女性となり、育休取得率は女性・男性ともに100%を達成しています。
物流ロボットの導入で省人化の成功(日本通運株式会社)
日本通運は、製品輸送から文化遺産輸送まであらゆる物流を手がけています。
閑散期では1日あたり1,500件の配送であるもの、繁忙期の夏では閑散期の3倍以上も増え、1日5,000件まで配達する必要があります。それゆえに長時間労働が強いられてしまうため、人材不足に悩まされていました。
人手不足を解消するために、ラピュタロボティクス社製のAMR(自律協働ピッキングロボット)を導入し、ピッキングした商品を所定の位置へ運ぶ際に活用することに決定しました。
その結果、業務スピードの向上につながり、少ない従業員で配送業務を回せるようになりました。
まとめ
日本の人手不足の原因は、少子高齢化や非正規雇用の増加、採用コスト不足などが挙げられます。企業が人手不足に陥ってしまうと、事業の縮小や職場環境の悪化、能力育成機械の減少など、さまざまなデメリットがあります。
また、人手不足の具体的な解決策として、人事制度の見直しや人材育成の強化、AI・ロボットの活用など、さまざまなアプローチが考えられます。本記事で紹介した成功事例を参考にしたうえで、人手不足を解決するための対策を実施しましょう。

