生産現場へのIoTの導入や工場のスマート化には、OPCサーバが欠かせない存在となっています。
この記事では、OPCサーバの原理や活用方法、導入の注意点をまとめています。OPCサーバの導入に必要な知識をひと通り解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
OPCサーバとは
OPCサーバとは、データの通信規格である「OPC」で指定される通信プロトコルを利用し、PLC(制御装置)等の情報の読み込みや書き込みを行うアプリケーションです。ここでは、OPCサーバの原理を紹介します。
OPCサーバの原理
OPCサーバは、データ規格や通信規格が異なる機器間の「仲介役」です。例えば、工場の機械が正常に動いているか確認する場合、OCPサーバとPLCは以下のような流れでデータのやり取りを行っています。
- アプリケーション→OPCサーバにデータを要求
- OPCサーバ→生産ラインの装置やセンサーのPLCから「稼働データ」を読み込む
- OPCサーバ→アプリケーションに「稼働データ」を書き込む
このような通信を複数のPLCと行うことで、機械のデータの収集や把握が可能となります。
OPCサーバの活用方法
ここでは、OPCサーバの活用方法を3つ解説します。
IoT機器との通信が可能
工場では機械の状態や生産状況を把握するために複数のIoT機器が導入されていますが、各IoT機器から得られるデータ量は膨大なため、通信に大きな負荷がかかってしまいます。
そこで、OPCサーバにより通信規格を統一し、すべての通信を一元化することで負荷を下げ、多くのIoT機器と円滑なネットワーク通信の構築を実現します。
組み込みマイコン・PCとの通信が可能
OPCサーバはPLCにアクセスすることで、データの制御方式が異なる装置間でのデータ共有を可能にします。そのため、OPCサーバを導入すれば、OPCサーバ経由でPCから組み込みマイコン搭載のロボットを操作でき、生産工程を1つのPCで制御できるようになります。
トレーサビリティの情報取得が容易
OPCサーバを利用すると、トレーサビリティの情報取得が容易になります。
トレーサビリティとは、製品の製造履歴が確認できる状態のことです。不具合や不良が生じた際にはトレーサビリティの情報を追うことで、トラブルの手がかりが得られます。
OPCサーバの導入により、製造工程上の製品情報やタイムスタンプなどをサーバ上でデータベース化できるため、トレーサビリティの情報へすぐアクセスできるようになります。
OPCサーバを選ぶ際の注意点
ここでは、OPCサーバを選ぶときの注意点を4つ解説します。
動作環境や通信環境
OPCサーバを正常に動作させるには、動作環境であるOSを確認する必要があります。例えばWindowsを使っているシステムにOPCサーバを導入する場合は、WindowsOSに対応するOPCサーバが必要です。
また、装置のPLCによっては、OPCサーバとの通信が機能しない場合があります。例えばOPCサーバと工場機械はイーサネットIPで通信されることが多いですが、PLCがCOM通信の場合はOPCサーバと通信できません。
そのためOPCサーバを導入する前に、接続予定の機械の動作環境や通信方式が合っているかも確認しておきましょう。
スペックの確認
それぞれの工場ごとで、必要な機能やシステムは異なります。求める機能により必要となるOPCサーバは変わるため、以下のスペックをチェックしておきましょう。
- 接続できる装置やロボットの台数
- データの形式(文字・数字・バイナリなど)
- データの容量
- 開発言語
- データ通信の頻度
工場や生産現場にどのような機能を実装するか検討し、OPCサーバを選ぶ必要があります。
開発言語との相性
OPCサーバはアプリケーションから指示を受け、情報取得や書き込みを行います。この際、アプリケーションはOPCサーバが対応している開発言語でプログラミングをしなければ動作しません。
そのためアプリケーションを独自に開発するためにも、自社の開発環境やエンジニアに合った開発言語をサポートするOPCサーバを選ぶようにしましょう。
OPCクライアントとの相性
OPCサーバを選ぶ際は、接続先であるOPCクライアントとの相性の確認が重要です。理論上はOPCに対応する機械であればOPCサーバに接続が可能ですが、バグや動作負荷により情報の共有ができないケースもあります。
OPCクライアントとの相性は、メーカーが公表する接続使用実績が指標になります。使用実績が多い装置では、デバッグ数も多く、エラーやバグへの対応がされている可能性が高いです。そのため、OPCサーバの選定の際は、接続予定のOPCクライアントとの使用実績数をチェックしましょう。
おすすめOPCサーバメーカー5選
OPCサーバのメーカーは国内外に数多く存在します。ここではおすすめのOPCサーバメーカー5社と、各提供製品を紹介します。
株式会社たけびし
たけびしは、産業機器や半導体・インフラ設備などを取り扱う企業です。FAシステム事業のソフトウェア製品として、「デバイスエクスプローラ OPCサーバ」を提供しています。
デバイスエクスプローラの特徴は、PLCやロボット、加工機など400シリーズもの機器に接続できる柔軟性です。また、施設内ネットワークだけではなくクラウドシステムにもアクセスでき、多言語対応やデータブリッジ機能も備えています。以下の表にて、一例をまとめました。
製品名 | 製品形態 | 標準価格 |
---|---|---|
DxpSERVER V7 プロフェッショナル OPCサーバ |
買い切り | 198,000円 |
DxpSERVER V7 水道標準プラットフォーム OPCサーバ |
サブスクリプション | 298,000円/年 |
なお、製品購入で1年の保守が自動的に付与されますが、2年目以降は追加保守を購入する必要があります。
横河計測株式会社
横河計測株式会社は、さまざまな測定器を取り扱っている企業です。同社の「OPCインタフェースパッケージ Exaopc」は、基本的なOPCサーバ機能に加え、以下のような付加価値の高い拡張機能も提供しています。
- プロセスデータの自動保存機能
- トラフィック制御機能
- 拡張テスト機能(FCSシミュレータ)
なお横河計測のOPCサーバの価格は、メーカーに直接問い合わせが必要です。
株式会社ロボティクスウェア
ロボティクスウェアは、FA/PA/BA向けのSCADAやOPCサーバなどのパッケージを開発を行っているメーカーです。
同社のOPCサーバ「FA-Server6」は100機種にも及ぶPLCに対応しており、DDEや各社SCADAとも接続ができます。またデータロガーや日報集計、データバックアップなどのマルチ機能が標準で搭載されており、多数の作業を自動で処理可能です。以下の表に一例をまとめました。
製品名 | 製品形態 | 価格 |
---|---|---|
FA-Server6 通常ライセンス | 買い切り | 100,000円(税別) |
FA-Server6 オンラインライセンス | サブスクリプション | 5,000円/月(税別) |
なお、ロボティクスウェアはSCADA製品も販売しており、同一バージョンの上位製品にアップグレードが可能です。
Empress
Empessは本社をカナダに置く、OPC UAのアプリケーション開発キットの開発会社です。IoTのさまざまな分野で使用されている組み込みデータベースや、OPC UAのベンダーとして有名です。
自社製のOPCサーバのため、バージョンアップや機能のアドオンに柔軟に対応できる点が魅力的です。Empress社の日本代理店はジャコム、菱洋エレクトロ、TISの3社で、価格等の見積もりは、各代理店にお問い合わせください。
PTC
PTCは、PLM関連のソリューションを提供する企業です。同社の「KEPServerEX」は、OPC等を活用して1,000以上もの装置やデータベースとの接続を可能にしたプラットフォームです。三菱電機・オムロン・ファナック・富士電機・パナソニックなど、日本メーカーのPLCやロボットにも対応しています。
また「KEPServerEX」では、接続する装置やデータベースに応じてドライバーとプラグインを購入する必要があります。そのため接続装置により総費用は異なります。以下は日本のメーカー製品の例です。
ドライバー名 | 製品形態 | 価格 |
---|---|---|
Fuji Flex |
|
|
Omron Suite |
|
|
Mitsubishi Suite |
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参考PTC Store | Product Search | PTC
なお日本での購入は、代理店である関東エルエンジニアリングに問い合わせが必要です。
まとめ
OPCサーバを導入することにより、異なるデータ規格を持つ装置やロボット間でも情報の共有が容易になります。しかし動作環境や必要スペックなどをしっかり検討しないと、十分な導入効果は得られません。活用方法や注意点を確認し、自社工場に合ったOPCサーバを選びましょう。