スカラロボットとは、水平方向に稼働する関節を所有し、柔軟な平面移動が実施できる点が特徴的なロボットです。スカラロボットを導入すれば、生産性の向上や省人化の実現などさまざまなメリットが得られます。
自社の業務効率をさらに向上させるために、スカラロボットの導入を検討している方も多いのではないでしょうか。今回は、スカラロボットの種類やメリット・デメリット、おすすめのメーカーについて解説します。
この記事ではスカラロボットの活用事例も解説するため、実際の成功談から自社に合った適切なロボットを見つけられるでしょう。スカラロボットの導入を検討している方は、ぜひご覧ください。
目次
スカラロボットとは
スカラロボットとは「水平多関節ロボット」とも呼ばれており、水平方向に動く3つの回転軸と先端部に上下方向に動作する1つの軸で構成される機器です。
スカラロボットには、さまざまな機能があります。この章では、スカラロボットの主な機能について紹介します。
スカラロボットの機能
スカラロボットの機能には、以下の3つがあります。
- 協調ロボ
- インバースタイプ
- 安全カバー
ここでは、それぞれの機能を解説します。
協調ロボ
協調ロボとは、1つの業務に対して複数のスカラロボットを同時に操作する機能です。協調ロボ機能により、ロボット同士が衝突せずに業務を進められます。
インバースタイプ
インバースタイプとは、業務に対して下から上方向へ加工業務できる機能です。インバースタイプを活用すれば、下から支えられるため搬送中に部品が落下しないように防止できます。
安全カバー
安全カバーとは、ロボットのセンサが人間との接触を検知すると動作を完全に停止させる機能です。安全カバーがない状態では、大きな事故が発生する可能性があります。安全カバーは作業者の安全を守るうえで、大切な機能の1つです。
スカラロボットの種類
スカラロボットの種類として、以下の3つが挙げられます。
スカラロボットの種類 | 概要・特徴 |
---|---|
高速スカラロボット | モータ配置の最適化やアームの軽量化により、高速な動作が可能なスカラロボット |
パワーコンスカラロボット | パルスモーターを搭載しているスカラロボット
軽量で持ち運びがしやすい |
カメラスカラロボット | カメラを装着したスカラロボット 細かな業務をより正確にできる |
最近では、高速スカラロボットが主流になりつつあります。高速で業務を進められれば、さらなる生産性の向上が期待できるからです。生産性をより向上させたいのであれば、高速スカラロボットを導入するとよいでしょう。
スカラロボットの活用事例
ここでは、スカラロボットの活用事例を5つ解説します。活用事例を参考にしたうえで、実際にスカラロボットを導入する判断をしましょう。
食品製造工場でトレーに詰める
スカラロボットに搭載したハンド機構で食品をつかんで、トレイに盛り付ける作業に活用されています。ハンド機構には質量計が組み込まれており、コンテナに入った食品を所定の質量の分だけをトレーに詰めるような作業も可能です。
トレー上に部品をピック&プレー
スカラロボットは複数の部品を同時につかみ、トレー上に部品をピック&プレーする作業も得意です。例えばオムロンのスカラロボットでは、ロボットビジョンシステムと連動したことで部品の種類や向きも自動的に把握し、効率的な作業を実現しています。
スカラロボットは複数の部品を扱う必要がある工場においても、生産性の向上に役立ちます。
ネジ締め
スカラロボットは先端のハンドを変更することで、ねじ締め作業にも対応可能です。例えばタイの製造工場では、デンソーのスカラロボットを活用し、省人化・ヒューマンエラーの削減に成功しています。
スカラロボットにより人の手では難しい小さなねじに対しても、正確かつ高速なねじ締めが可能になるため、さまざまな工場で活用されています。
高精度な圧入工程
スカラロボットは、高精度な圧入工程でも活用されています。例えば田中鉄工所では、川崎重工の双腕型スカラロボットをアルミブロックに2本の平行ピンを圧入する工程に導入しました。結果として、1万ヵ所もあるブロックへ正しい圧と深さで挿入する難易度の高い作業の自動化に成功しました。
田中鉄工所の例のように、スカラロボットは圧入工程のように正確性を求められる繊細な業務を遂行する際にも活用できます。
ラベル貼り付け
スカラロボットは高精度な位置決めにより、高精度なラベルの貼り付けができます。スカラロボットはラベルの幅に応じて、貼り付け方やリールの供給サイズの変更が可能で、さまざまなラベルの貼り付けにも柔軟に対応できます。
スカラロボット導入のメリット、デメリット
ここでは、スカラロボットを導入するメリットとデメリットを解説します。
メリット
スカラロボットを導入するメリットとして、以下の2つが挙げられます。
- 狭いスペースでロボットを稼働させられる
- シンプルな構造であるため管理や制御がしやすい
スカラロボットはほかの産業ロボットと比較すると小型であるため、狭い場所でも導入できるメリットがあります。また、スカラロボットは構造がシンプルなため、多軸の垂直多関節ロボットと比べて手軽に導入ができます。
デメリット
スカラロボットを導入するデメリットとして、以下の2つが挙げられます。
- 高速な動作が求められるタスクには不向き
- 軸数が少なく使用用途が限られる
スカラロボットは自由度が低くアームを折り曲げるような動作はできないため、使用用途が限られています。
おすすめスカラロボットメーカー8選
おすすめのスカラロボットのメーカーとして、以下の8つを紹介します。
- 株式会社デンソーウェブ
- 株式会社不二越
- 株式会社アイエイアイ
- ヤマハ発動機株式会社
- セイコーエプソン株式会社
- 芝浦機械株式会社
- 蛇の目ミシン工業株式会社
- ストーブリ株式会社
株式会社デンソーウェブ
株式会社デンソーウェーブは、電機や医療系など幅広い業界で産業用ロボット事業を展開する企業です。同社が開発した「HSR-048」は長時間の動作ができるため、作業の迅速さを求めているケースに適しています。
株式会社不二越
株式会社不二越は、切削工具や自動車製造に活用する産業用ロボットの製造を中心事業としている企業です。同社が開発した「EC06」は500/600/700ミリメートルと最大リーチの異なる3種類を展開しており、業務に適したリーチの長さのスカラロボットが選択できます。
株式会社アイエイアイ
株式会社アイエイアイは、超小型から超大型までさまざまなサイズのロボットを開発しているメーカーです。同社では「IXPシリーズ」や「IXAシリーズ」など、電動アクチュエーターを活用したスカラロボットを主に開発しています。
ヤマハ発動機株式会社
ヤマハ発動機株式会社は、全方位や小型、壁取りつけなど幅広い種類のスカラロボットを製造しているメーカーです。例えば、全方位スカラロボットの「YK-TW」では、機械下の全範囲に対してアクセスができます。同社では、省スペースで運用できるロボットの開発に力を入れています。
セイコーエプソン株式会社
セイコーエプソン株式会社は、ロボット開発に強みを持つ企業です。例えば、同社が提供する「GXシリーズ」では、高速性が求められる搬送作業やねじ締め圧検査などの作業を迅速に実施できます。また同社は導入支援や定期点検などをサポートしており、安心して利用ができます。
芝浦機械株式会社
芝浦機械株式会社は、多種多様な製造現場の自動化に貢献するためのシステムを開発する企業です。例えば同社の「THE400」では、精密さを求められる電子機器や自動部品などの組み立てに活用できます。同社では、生産効率の向上につながるようなロボットやコントローラーを多数開発しています。
蛇の目ミシン工業株式会社
蛇の目ミシン工業株式会社は、ミシン開発で培われた技術を基盤としてスカラロボットの開発をしているメーカーです。例えば「JS3シリーズ」は、同社が独自で開発したティーチングソフトを採用しているため、設備の立ち上げや稼働時の微調整も容易に実施できます。またお試し期間も用意されているため、安心して利用ができるメリットがあります。
ストーブリ株式会社
ストーブリ株式会社は、産業用ロボットや電子コネクタ、繊維機器なども取り扱っている企業です。特に同社の「TS2シリーズ」は軽量性に優れており、迅速な動作が求められる作業で活用されています。
まとめ
スカラロボットとは、水平方向に稼働する関節を所有し、柔軟な平面移動が実施できる点が特徴的な機械です。その特徴から、トレー状へのピック&プレーやラベルの貼り付け工程など、水平方向の作業が必要な場面で活用されています。
スカラロボットの導入により、社内の生産性を向上させましょう。