油圧アクチュエータとは?種類や最新の活用事例を紹介!

油圧アクチュエータをロボットへ使用すれば、さまざまなメリットが得られるため、導入を検討している企業も多いでしょう。

そこで今回は、油圧駆動型ロボットの種類や活用事例、メリット・デメリットについてわかりやすく解説します。この記事を読めば、油圧アクチュエータを使用したロボットを導入する判断がしやすくなります。油圧アクチュエータを使用したロボットの導入に悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。

油圧アクチュエータとは

油圧アクチュエータとは、重量物の押しつぶしや移動時に使用する油圧機器です。入力されたエネルギーを伸縮・旋回などの機械エネルギーに変換する動力伝達装置で、人間を模倣した複雑な動きが実現可能です。主に、工場の設備やプレス機器等の製造現場で使用されます。

それでは、油圧アクチュエータの特長や種類を解説します。

そもそも油圧とは?

油圧とは、油を閉鎖された空間に閉じ込め、別の離れた場所に油の圧力を伝えることにより、大きな力を引き出す技術です。

油圧には、パスカルの原理が応用されています。パスカルの原理とは、密閉された容器内で静止した液体の一部に圧力を伝えれば、液体のすべての部分にその圧力が等しく伝わる原理です。油圧ではパスカルの原理に基づいて、油を介すことである空間の小さなエネルギーをほかの空間の大きなエネルギーへ変換しています。

また、油圧は油圧ポンプや油圧アクチュエータなどさまざまな機械で活用されており、ロボットの動力となっています。

油圧アクチュエータの特長

そもそも「アクチュエータ」とは、入力された圧力を回転運動や直線運動の機械エネルギーに変換する機械です。つまり、油圧アクチュエータは作動油の流体エネルギーを機械的な動力に変換するものだと解釈するとよいでしょう。

また油圧アクチュエータの特長として、以下の2つが挙げられます。

  • 大きな動力を容易に得られる
  • 圧力や速度の制御がしやすい

油圧アクチュエータは液圧技術のなかでも力の変換効率に優れているため、比較的簡単に大きな動力を得られます。

油圧アクチュエータの種類

油圧アクチュエータにはさまざまな種類があります。ここでは以下の3種類を解説します。

  • 油圧シリンダ
  • 油圧モータ
  • 振動型アクチュエータ

油圧シリンダ

油圧シリンダとは、ピストンを油圧によって動作させ、ピストンで固定された棒の押し出し・引き込み運動により機械的な仕事をする油圧アクチュエータです。油圧シリンダはシリンダ内部のオイル量を調整することで、ピストン運動を制御します。

また油圧シリンダは低騒音でかつ高出力を出せるため、車のブレーキや建設現場で用いられる機械で活用されています。

油圧モータ

油圧モータとは、油圧ポンプ等により得られた圧油を取り込むことで回転運動に変換する油圧アクチュエータです。油圧モータは動力源として活用される場合が多く、工場のプレス機やフォークリフト、車のブレーキなどに活用されています。

揺動型アクチュエータ

揺動型アクチュエータとは、油圧によるピストンの上下運動と、回転シャフトにより揺動運動へ変換する油圧アクチュエータです。揺動型アクチュエータには、直接揺動運動をする形式と直接運動から揺動運動に変換する形式の2種類があります。

また揺動型アクチュエータは、テーブルの往復動作やアームの回転駆動をする際に活用されています。

油圧アクチュエータを使用したロボットの種類

油圧アクチュエータを使用したロボットの種類として、以下の2つを解説します。

  • 旋盤加工機
  • プレス機

旋盤加工機

旋盤加工機とは、加工したい金属を回転させながら刃物を当てて切削加工をする機械です。旋盤加工機には、以下の6つの種類があります。

旋盤加工機の種類 特徴
汎用旋盤 手動で動かす標準的な構造の旋盤

特注品や試作品の加工などの少量生産に活用される

卓上旋盤 作業台に据え付けて使用される小型の旋盤

小さい製品や大きな旋盤の設置が難しい作業場で活用される

立旋盤 主軸が上を向いている旋盤

製品を水平に回転させて加工するため、安定した加工の実現が可能

タレット旋盤 旋回する刃物台に取りつけた旋盤

旋盤を回転させて複数の工具の切り替えができるので、工具交換が不要

NC旋盤 数値制御装置が組み込まれた旋盤

機械が自動的に加工してくれるため、安定した質の商品が製造できる

正面旋盤 大型の主軸が作業者の正面を向いている旋盤

また、旋盤加工機を用いて自動車部品やエネルギー部品などに加工しています。旋盤加工機では、油圧アクチュエータが潤滑油として活用されており、加工精度の向上や工具寿命の延長に大きく貢献しています。

プレス機

プレス機とは、上下から強力な圧力を加え、金属の切り取りや折り曲げが実施できる機械です。主にステンレスやアルミなどの薄い板金素材に対して形状を変えられるため、金属加工をする際に頻繁に用いられています。プレス機の種類は、以下の7つです。

プレス機の種類 特徴
C型プレス 横から見たときにCの形をしていることから名付けられた汎用性の高いプレス機

金型のセットがしやすく作業面に優れている

トランスファプレス 材料の送り装置が内蔵された多連続工程のプレスライン加工で使用されるプレス機

高速かつ長時間連続して加工可能

粉未成形プレス 加工の工程で出た金属をプレスしてペレット状にするプレス機
冷間鍛造プレス 金属を常温状態で塑性変形をさせるプレス機

高精度な加工が可能で、切りくずが少ない

門型プレス 本体の四つの角を柱で支えたプレス機

強い負荷を与えてもフレームがゆがみにくく、金型交換時に作業がしやすい

サーボプレス サーボモーターを用いてスライドの速さを自由に変化させられるプレス機

スライドの速さを自由に変化させられるため、生産性や加工精度に優れている

熱間鍛造プレス 高温の金属材料を強い圧力で押しつぶし、金型成形をするプレス機

プレス機では、油圧アクチュエータがシリンダー内のピストンを動かす役割を担っています。

油圧アクチュエータを使用したロボットの活用事例

油圧アクチュエータを使用したロボットの活用事例として、以下の3つを解説します。

  • 三菱重工の「油圧駆動型多軸マニピュレーター」
  • 東芝の「双腕ロボット」
  • H-MUSCLLEの「油圧駆動型ロボット」

三菱重工の「油圧駆動型多軸マニピュレーター」

三菱重工の「油圧駆動型多軸マニピュレーター」は、場所や回収手段、形状などが不確定の福島第一原子力発電所の燃料デブリ回収を目的に開発されたロボットです。

油圧駆動型多軸マニピュレーターは先端質量負荷約500kgと耐久性が高く、アームも7100mmと長くなっています。そのため、遠距離作業が可能で、人にとって危険性が高い場所において安全に作業ができるロボットとして活用されています。

東芝の「双腕ロボット」

東芝の「双腕ロボット」は、人と同じ作業スペースに設置できるほどコンパクトなサイズのロボットです。双腕ロボットは油圧アクチュエータと電動アクチュエータを組み合わせることで、最大100kgの持ち運びが実現できます。

双腕ロボットはスペース面からロボットの導入が進んでいなかった各生産ラインへ導入され、重量物の運搬に活用されています。

H-MUSCLLEの「油圧駆動型ロボット」

H-MUSCLLEの油圧モーターが搭載された「油圧駆動型ロボット」は、電動型ロボットよりも大きなパワーと耐久性を実現しています。

H-MUSCLLEでは小型で多自由度の油圧ロボットや制御性に優れた油圧機器の開発に取り組み、新しい油圧コンポーネント技術の提供を進めています。

油圧アクチュエータを使用したロボットのメリット・デメリット

ここでは、油圧アクチュエータを使用したロボットのメリット・デメリットを解説します。

メリット

油圧アクチュエータを使用したロボットのメリットとして、以下の3つが挙げられます。

  • 油圧は圧縮性が少ないので圧力が高められ、位置決め精度や応答性に優れている
  • 小さな力から大きな力を生み出せるので、高速でかつ精密に制御できる
  • 油は防腐性に優れているので、金属が腐食がしにくくメンテナンス費用が安い

油圧アクチュエータは、わずかな電気的操作信号を油圧機器に与えるため、位置や加速度、速度などを高速で精密に制御ができます。

デメリット

油圧アクチュエータを使用したロボットを導入するデメリットには、以下の3つがあります。

  • 油漏れの発生可能性があるので周囲の環境汚染や火災発生の危険性がある
  • 温度によって油の粘度が異なるため流量制御が困難である

油圧アクチュエータの油漏れをする主な原因は、油圧ホースの摩耗や干渉が挙げられます。油漏れによるリスクをなくすためには、油圧ホースが摩耗しないように、「スプリングガードやスパイラルチューブ」を用意するとよいでしょう。

油圧アクチュエータを使用したロボットの市場

油圧機器市場のレポートによると、2021~2026年までの年平均成長率は「4.36%」で、2026年までに「569.8億米ドル」に達すると予測されています。このレポート内容から、油圧アクチュエータを使用したロボットの市場も、拡大していくと予測できるでしょう。

参考油圧機器市場レポート/Mordor Intelligence

実際のところ、油圧アクチュエータはロボットアームへの活用が期待されています。例えば、H-MUSCLLEの「油圧駆動型ロボット」は油圧アクチュエータを使用しており、ロボットのサイズに対して大きな動力を発生させられるメリットを活用しています。

ロボットアームへの活用ニーズの高まりとともに、油圧アクチュエータを利用したロボットの市場も成長していくでしょう。

油圧ロボットメーカーおすすめ5選

おすすめの油圧ロボットメーカーとして、以下の5社を紹介します。

  • 川崎重工
  • ボストン・ダイナミクス
  • テムザック
  • 東芝
  • 日本サポートシステム株式会社

上記の5社で油圧ロボットメーカーを導入しようと悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

川崎重工

川崎重工は、バイクや産業用ロボットの製造に携わっている企業です。川崎重工は自動車や医療、物流など幅広い分野において、豊富な納入実績を誇っています。

また同社は、油圧の開発に対して100年以上の歴史を持つ油圧機器のトップメーカーです。現在は人型ロボットの「Kaleido」に油圧シリンダの搭載を試みるといった、油圧アクチュエーターと産業用ロボットを組み合わせた研究開発にも取り組み、日本の油圧機器メーカーの第一線として活躍しています。

ボストン・ダイナミクス

ボストン・ダイナミックスは、最先端ロボットの研究開発を行っている企業です。同社は、「BigDog」や「Atlas」などの油圧アクチュエータを活用した歩行型ロボットの開発を積極的に進めてきました。

同社は油圧アクチュエータ用の独自のサーボバルブ開発に成功してきたように、優れた油圧技術を有しています。

テムザック

テムザックは、医療や災害時に活用できるサービスロボットの開発や製造をしている企業です。

例えば災害援助ロボットの「援竜」は2つの油圧アームにより瓦礫を持ち上げ、人助けができるロボットです。同社では油圧アクチュエータを利用し、災害現場で活躍するレスキューロボットを多数提供しています。

東芝

東芝は、数多くの油圧アクチュエータを使用した機器を提供し続けてきた企業です。先述した「油圧駆動双腕ロボット」や「油圧エレベーター」など、さまざまな機器に油圧技術を活用しています。

日本サポートシステム株式会社

日本サポートシステム株式会社は、製造実績が1万件以上を誇る大手ロボットシステムインテグレータです。設計から納品後のサポートまで、ロボットの導入に関するサービスをトータルで対応しています。

まとめ

油圧アクチュエータを使用したロボットを導入すれば、高速でかつ綿密な制御ができたり、金属が腐食せずメンテナンス費用が安くなったりします。

本記事で解説した事例を参考にし、油圧アクチュエータを使用したロボットの導入を進めていきましょう。