産業用ロボット特別教育はオンラインで受講可能?受講内容や実施機関を紹介

産業用ロボットを扱う際には、特別教育の受講が義務付けられています。受講を検討中の方のなかにはオンラインでも受講が可能か、気になる人もいるのではないでしょうか。

今回は、産業用ロボット特別教育がオンラインでの受講が可能かについて解説します。本記事を読むことで、受講可能な機関やオンライン講習の手続き方法を理解できるので、受講に必要な手続きをスムーズに進められるようになるでしょう。特別教育の受講形式に悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。

産業用ロボット特別教育はオンラインで受講が可能?

産業用ロボット特別教育の学科は、オンラインでの受講が可能です。特別教育を実施している機関では、対面での講習とオンライン講習の2種類が用意されているケースが多く、自由に選択できます。

ただし実技は、実際にロボットを使って演習を行う必要があるため、オンライン受講はできません。

そもそも産業用ロボット特別教育とは

ここでは、産業用ロボット特別教育の目的と受講義務、カリキュラム内容について解説します。産業用ロボットを扱う作業者にとっては必要不可欠な資格なので、内容を把握しましょう。

特別教育の目的と受講義務

特別教育の目的は、産業用ロボットの取り扱いやメンテナンスの知識を習得、重大事故の予防です。

産業用ロボットは高度化・複雑化が進み、作業者の知識が不足している状態では、誤操作による事故や利益の損失につながります。また、溶接や運搬などに用いられる産業用ロボットは出力も大きく、挟まれや巻き込まれ事故に発展する恐れもあるでしょう。

そのため、産業用ロボットを用いた業務を担当する作業者全員に、受講が義務付けられています。

主なカリキュラム内容

産業用ロボット特別教育のカリキュラムは、「教示作業に関する教育」と「検査作業に関する教育」の2種類です。どちらも産業用ロボットを安全に扱うために重要な内容です。

ここでは、教示と検査それぞれの教育内容について紹介します。

教示作業に関する教育内容

まずは教示作業に関する学科の教育内容について、以下の表で紹介します。

科目 教育内容 受講時間
産業用ロボットに関する知識 産業用ロボットの種類、各部の機能及び取り扱いの方法 2時間以上
産業用ロボットの教示等の作業に関する知識 教示等の作業の方法、教示等の作業の危険性、関連する機械等との連動の方法 4時間以上
関係法令 法令及び安衛則中の関係条項 1時間以上

次に実技の内容は、以下の通りです。

科目 受講時間
産業用ロボットの操作の方法 1時間以上
産業用ロボットの教示等の作業の方法 2時間以上

検査作業に関する教育内容

検査作業に関する特別教育でも、学科と実技があります。学科の内容は以下の通りです。

科目 教育内容 受講時間
産業用ロボットに関する知識 産業用ロボットの種類、制御・駆動方式、各部の構造や機能等の取り扱い方法、制御部品の種類と特性 4時間以上
産業用ロボットの検査等の作業に関する知識 検査等の作業方法や危険性について、関連する機械等との連動方法 4時間以上
関係法令 法令や安衛則中の関係条項 1時間以上

次に、実技の内容は以下の通りです。

科目 受講時間
産業用ロボットの操作方法 1時間以上
産業用ロボットの検査等の作業方法 3時間以上

オンラインの特別教育の形式

オンラインの特別教育とは、会場に直接出向くのではなく、自宅や自社のパソコン上で受講する形式です。

ここでは、オンライン形式とオフライン形式を比較しながら、オンラインの特別教育を紹介します。

オンラインとオフライン形式の比較

オンラインとオフラインでの講習内容は同じですが、「移動と受講中の雰囲気」に関して違いがあります。

オンラインでの受講は、講習会場へ行く必要がありません。一方のオフライン形式は、実際に会場に向かい講習を受ける必要があるため、会場まで移動する必要があります。

また講習中においてオフラインの場合は、ほかの受講者と同じ空間で受講できるため、緊張感があります。一方で、オンライン形式ではモニター越しで受講するため、リラックスした状態で受講できます。

それぞれの違いを考慮したうえで、より集中して受講できる方を選ぶとよいでしょう。

オンデマンド配信形式の特別教育

特別教育のなかには、受講生の好きなタイミングでオンライン講習が受けられる「オンデマンド配信形式の特別教育」もあります。

オンデマンド配信はリアルタイムでの講習とは違い、あらかじめ収録されている講義内容を見ながら受講します。受講中に見直したい部分があった際は、その都度巻き戻して学習できる点がメリットです。

オンデマンド配信はオフラインと比べると講師に質問がしにくいとはいえ、リアルタイムでの受講が難しい場合に便利なため、検討してみるとよいでしょう。

オンライン特別教育のメリット・デメリット

産業用ロボット特別教育のオンライン受講には、いくつかのメリットとデメリットがあります。長所と短所を把握することで、オンラインが自分に向いているかを判断できるようになるでしょう。

それでは、オンライン特別教育のメリットとデメリットをそれぞれ見ていきましょう。

メリット

オンライン特別教育のメリットは、会場へ行く必要がなく、職場や自宅での受講が可能な点です。そのため会場での拘束時間や、交通費や宿泊費などのコストも発生しません。

また会場までの移動時間もかからないため、時間の有効活用にもつながります。

デメリット

オンライン特別教育のデメリットは、パソコンやタブレットなどのデバイスの用意や、ネット環境の準備を自分でしなければならない点です。特に通信環境が乏しい場合には、スムーズに受講できない可能性があるため注意が必要です。

ほかには、オンライン講座ではその場に講師がいないため、質問がしにくい点も挙げられます。講習中に疑問点が浮かんでもすぐに解決できない状況は、知識の習得の妨げにもつながります。そのため質問事項がある際は、受講後にメーカーに問い合わせるなどの対応を検討しましょう。

おすすめのオンラインの特別教育実施メーカー

産業用ロボットメーカーでは、オンラインでの特別教育も実施しています。ここでは、以下の3社の特別教育について紹介します。

  • 株式会社バイナス
  • 株式会社立花エレテック
  • 松栄テクノサービス株式会社

どの企業もオンライン講習を実施する体制が整えられているので、受講を検討する際の参考にしましょう。

株式会社バイナス

「株式会社バイナス」は、自動車や食品などの製造業向けに、最新技術を搭載したロボットのアプリケーションを提供する企業です。

バイナス社の特別教育では、学科と実技の受講が可能。学科はオンライン受講に対応しており「Microsoft Teams」を用いて行われます。また、講習用のテキストも配布されるため、受講後の復習も可能です。なお受講料はテキスト代含めて、1人あたり35,000円(税抜)です。

株式会社立花エレテック

「株式会社立花エレテック」は、技術商社として電機・電子製品を幅広く扱っている企業です。

立花エレテック社の特別教育の学科は、「Microsoft Teams」を用いたオンライン形式です。また受講料は、一人35,000円(税抜)です。

松栄テクノサービス株式会社

「松栄テクノサービス株式会社」は、ロボットの導入や点検、買取などさまざまな分野でサービスを展開している企業です。教育事業にも力を入れており、産業用ロボットを扱う人材の育成も行っています。

松栄テクノサービス社のオンライン形式の学科講習は、人数に制限がなく、1度で作業者全員の特別教育を済ませられるメリットがあります。受講料はテキスト代と特別教育修了証発行代を含めて、1人あたり35,200円(税込)です。

産業用ロボット特別教育の受講対象者と資格

産業用ロボット特別教育は、作業者の仕事内容によって必要な資格が異なります。ここでは、産業用ロボット特別教育の受講対象者と、それぞれの対象者に義務付けられた資格について解説します。

教示等の業務を行う人材

教示等の業務を行う人材に必要な資格は、「産業用ロボットの教示等の業務に係る特別教育」です。教示等の業務を行う人材として、以下のような例が挙げられます。

  • ロボットへプログラミングで動作をインプットさせる人
  • ロボットを直接操作をする人

産業用ロボットを扱う作業者は、全員受講が必須となっており、ロボットの稼働範囲外でロボット操作にあたる作業員も対象です。

検査等の業務を行う人材

検査等の業務を行う人材に産業用ロボットの取り扱いに必要な資格は、「産業用ロボットの検査等の業務に係る特別教育」です。検査等の業務を行う人材は、以下の通りです。

  • 産業用ロボットの運転中に検査をする人
  • 修理をする人
  • ロボットの部品交換をする人

教示同様、ロボットの稼働範囲外でロボットの操作をしている人も、安全性の観点から受講が義務付けられています。

オンライン受講の手続きと受講場所

産業用ロボット特別教育は、さまざまな機関で受講が可能です。ここでは、以下の機関での手続き方法や受講場所について解説します。

  • 都道府県の労働基準協
  • 産業用ロボットメーカー会連合会

機関によって必要な手続きが異なるため、内容を把握したうえで受講しましょう。

都道府県の労働基準協会連合会で受講

各都道府県の労働基準協会連合会では、オンラインでの特別教育は実施していません。そのため受講の際は、各連合会が指定する会場まで向かう必要があります。受講場所は各都道府県によって異なるため、所在地の労働基準協会連合会のWebサイトで会場を確認しましょう。

また手続き方法は、インターネット上での申し込みや、Webサイトから申込書を印刷し郵送する方法などさまざまです。

産業用ロボットメーカーで受講

産業用ロボットメーカーでも特別教育の受講が可能です。ここでは、以下の3社の受講方法を紹介します。

  • デンソー
  • ファナック
  • 安川電機

オンラインで受講できるコースがそれぞれ異なるので、応募の際はほかのコースと間違わないように注意が必要です。

デンソー

デンソーでオンライン受講が可能なのは、「特別教育(教示)コース(Web版)」のみです。受講手続きの流れは以下の通りです。

  1. 特別教育(教示)コース(WEB版)の申し込みページへアクセスする
  2. WEBコースを選択し、受講したい日程の参加ボタンをクリック
  3. 必要事項を入力して申し込み完了

なおデンソーのWebサイト上での受講となるため、自宅や職場での受講が可能です。

ファナック

ファナックの「ロボット操作短期習得コース」は、産業用ロボット特別教育の学科のみオンライン受講が可能です。そのため、受講場所は自宅や職場でも問題ありません。

受講の際の手続きは以下の通りです。

  1. ファナックのWebサイトで希望する講習のコースを選び「申込」をクリック
  2. 「居住性の確認」で国籍・海外移住などの項目にチェックを入れる
  3. 申込者の名前等の必要事項を入力し「確認」をクリック

申込後は受講票を受け取り、当日まで保管しておきましょう。

安川電機

安川電機では、「産業用ロボットの教示等特別教育」と「産業用ロボットの検査等特別教育」の2つが受講可能です。ただしオンライン講習ではなく、会場受講です。

特別教育の申し込みを行う際の手続きの流れは、以下の通りです。

  1. 安川電機のWebサイトで受講を希望するコースの関東・中部・関西・九州のいずれかの地域を選択し、「予約」をクリック
  2. 空きがあるコースをクリック
  3. 「予約システムID登録する」にチェックを入れ、氏名等の必要事項とログインID・パスワードを入力し、「内容確認へ進む」をクリック

なお手続きの際は、予約システムIDの登録が必須であるため、忘れずに登録しましょう。

よくある質問

ここでは、産業用ロボット特別教育を受講するうえで、考えられる疑問点について2つ解説します。

オンラインの特別教育とオフラインの特別教育の費用の違いはありますか?

特別教育の費用は、メーカーによってオンラインとオフラインで異なる場合があります。

例えばファナック社のオフラインで受講可能な「ロボット教示・操作基本コース」は、110,000円の受講料がかかります。一方オンライン講習である「ロボット操作短期習得コース」は、55,000円とオフライン講習の半額で受講可能です。

そのため受講を検討する際は、受講形式でどれくらい費用が変わるかを確認したうえで選択するとよいでしょう。

オフライン受講時の注意点を教えて下さい。

オフライン受講で講師から指導を受けられるのは、当日限りです。そのため、受講中に出た疑問点をそのままにしておくと、質問の機会を失ってしまうので注意が必要です。

受講したメーカーが講習後も受講者へのフォローを行っている場合は、積極的に利用して疑問点を解決するようにしましょう。

まとめ

産業用ロボット特別教育は、学科のみオンライン受講が可能な場合があります。オンラインで受講する場合、講習会場へ向かう必要はなく自宅や職場など好きな場所で講習を受けられます。ただし、実技を受講する際は実際にロボットを使用するため、オンラインには対応していません。

またオンライン講習には、オンデマンド配信形式での受講も用意されています。オンデマンド配信は、あらかじめ収録された講習内容を見ながらとなるため、見直したい部分があった際は巻き戻しも可能です。

オンライン講習は会場へ移動する必要はなく、移動にかかるコストが発生しない点が魅力の1つです。場所や時間に依らず、自分の好きなタイミングで特別教育を受けたい方は、今回紹介したオンライン講座を受講しましょう。