工場の自動化とは?具体的な成功事例8つとおすすめサービス6選

工場の自動化は、省人化やコスト削減を実現するうえで重要な取り組みです。
今回は、自動化に成功した工場の事例を紹介します。
この記事を読めば、自動化によりどのような作業を改善できるのかがわかります。自動化を成功させる秘訣を見ていきましょう。

工場の自動化とは

工場の自動化とは、人の手で行われている工場内のさまざまな業務や作業工程を、自動で行えるように設備やシステムを変更することです。
自動化の程度は生産内容や工場の規模により異なり、特定作業のみの自動化ケースや工場そのものを完全自動化するケースなど、さまざまです。

工場の自動化事例8つ

ここでは、工場の自動化事例を8つ紹介します。

目視確認検査を自動化(株式会社日立産機システムの印字検査装置)

食品製造業社が、検査装置の導入により目視確認検査の自動化に成功した事例を紹介します。
パッケージへの印字は、内容物の凹凸によりきちんと印刷されなかったり、印字欠けが発生したりします。そのため、作業員が印字内容を目視でチェックしていましたが、生産数の増加や商品の多様化により対応が難しくなっていきました。また、作業員の経験やスキルにより検査精度にバラつきがあり、チェック体制の均一化も大きな課題でした。

そこで、日立産機システムの「印字検査装置MC-20S」を導入。検査装置による大まかな目視確認工程を追加し、作業員は最終確認チェックを担当する体制に変更しました。多様なパッケージの設定も簡単に調整でき、検査精度の均一化により作業員の業務負担も大きく改善されました。

ロボットによる食材の盛付け(コネクティッドロボットの盛付けロボット)

自動化は難しいとされてきた食材の盛り付け作業における自動化事例を紹介します。
マックスバリュ東海の工場では、ポテトサラダ等の繊細な取り扱いが必要な食品を人の手によりパック詰めしていました。しかし、人手不足により生産が需要に追いつかなくなっていました。
そこで、コネクテッドロボティクス社の盛り付けロボット「Delibot」を導入。導入後は1ラインで4〜5人分をロボットで代替でき、人手不足を大きく解消できました。

自動搬送ロボットによる運搬(シャープ自動搬送装置)

物流倉庫での入出庫搬送を自動化した例を紹介します。
空調機器部品の発注・保管・発送を担うダイキン工業の西日本パーツセンターでは、貨物の入出庫作業が倉庫業務の2割を占めていました。

入出庫にかかる時間を短縮するために、シャープ株式会社の「自動搬送装置(AGV)」を導入。最長往復約500mある搬送作業の自動化や最大重量500kgの貨物搬送の自動化を実現し、15%もの生産向上と2人分の人員を削減することに成功しました。

基板組立ロボセルによるコネクタ挿入作業(FUJI SW-BA)

複数のロボットを導入し、効率のよい生産形態を確立させた例を紹介します。
株式会社理研計器奈良製作所では、オリジナル製品の「カス上がり検出器」の小型化に伴い、従来のはんだ付け方法の限界が見えていました。そのため従来のフロー槽をやめ、「セレクティブトレースはんだ装置(プリント基板の指定箇所にはんだ付けできる装置)」に変更したものの、前工程であるコネクタ挿入に適したシステムが見つからず、作業工程の効率化が進んでいませんでした。

そこで、株式会社FUJIの基板組立ロボセル「SW-BA」をコネクタ挿入工程に導入。SW-BAは基盤組立の必要なシステムがまとまっており、かつセレクティブトレースはんだ装置とのタクトタイム面でも相性がよく、すぐに効果を実感できるものでした。
はんだ装置との生産フローが確立し、導入前と比較して実績ベースで約30%ものコストダウンに成功しています。

自動塗装ガンによる粉体塗装(旭サナック ECXa)

塗装を行う自動ガンの配置を変更し、自動化の取り組みを強化できた事例を紹介します。
株式会社マルシンの塗装工場では、従来の上下配列の自動ガンが大型のアルミニウム建材の塗装に対応できず、生産性に悪影響を与えていました。また上下配列では塗装ムラが出るため、塗装補正のために作業員を確保する必要があり、人員確保面でも問題も抱えていました。

そこで同社は、旭サナック社のデュアル電界方式静電粉体自動ガン「ECXa」を横一列の配置に変更したのです。配置変更後は、仕上がりの質の向上に加え、補正作業にかかる時間を減らせたことで省人化にも成功しています。

パラレルリンクロボットによるパレット詰めの自動化(オムロン パラレルリンクロボット)

ロボットの導入により、人員不足を解消した例を紹介します。
株式会社古野食品のこんにゃく製造工場では、人手不足が生産上の大きな課題でした。製造直後の熱いこんにゃくを、包装を傷つけないようパレットに詰める必要がありました。

そこで、オムロン株式会社のパラレルリンクロボット「Hornet」の導入により、パレット詰め作業の自動化を進めました。ロボットによりライン上の板コンニャクのピッキングからパレット詰めまで自動化に成功し、1人分の省人化に成功しました。

医薬品向けの菌培養を自動化(安川電機 MOTOMAN-MH5BM)

医薬品の開発現場に高精度なロボットを取り入れ、品質検査や分析の自動化に成功した例を紹介します。
医薬品の中間検査にあたる「生菌数試験」では、菌の混入有無を確認するなかで、作業員が持ち込んだ菌が誤検出される問題がありました。また細かい作業を繰り返し行うため、作業員への高負担が課題でした。

そこで安川電機の生菌数試験ロボットシステムの「MOTOMAN-MH5BM」を導入し、菌の持ち込みによる誤検出を防ぐとともに、経験やスキルが必要となる繊細な作業の自動化に成功しました。

農作物の選別を自動化(オークラ輸送機株式会社搬送システム)

農作業の仕分け処理と迅速な梱包により、農作物が短時間で出荷可能となった事例を紹介します。
あるトマトの最先端ハウス栽培施設では、得意先や消費者へ新鮮なトマトを届ける方法を模索していました。

そこで、オークラ輸送機株式会社の搬送システム「ソロバンコンベヤ」を導入し、選果から出荷までスムーズに行える物流システムを構築しました。工場内の自動化により、得意先へ即日出荷ができる体制を整えることに成功したのです。

工場を自動化するメリット・デメリット

工場を自動化するメリットとデメリットを紹介します。

メリット

工場を自動化すれば、以下のようなメリットが得られます。

  • 人手不足の解消につながる
  • 人件費の削減ができる
  • 生産効率の向上

工場を機械により自動化することで、従来よりも少ない作業員で工程をこなせるようになります。そのため省人化を実現し、人手不足の解消につながります。

また自動化システムの導入後は、システムの電気代やメンテナンス費用などのランニングコストだけで生産ができるようになります。そのため自動化に成功すれば、人件費を削減できるメリットもあります。

工場の自動化を行うと、人間では時間がかかっていた作業も迅速に行えるようになります。ロボットは休憩が必要ないため、日中だけでなく夜間も稼働でき、生産効率が大幅にアップします。

デメリット

工場の自動化にはデメリットも存在します。自動化のデメリットは以下のとおりです。

  • 初期費用が高額
  • 誤作動や設定ミスによるリスクが大きい

工場を自動化するには、高額な初期費用がかかります。作業に合わせたロボットを特注したり、工場に合わせた繊細な調整が必要なシステムなどは費用も大きくなります。

自動化は効率的に作業が行える一方で、誤作動やミスに気がつかないまま運用するとロボットや設備が壊れる原因になります。修理費用がかさむほか、作業員が危険に巻き込まれるリスクもあります。

工場自動化のおすすめサービス6社

ここでは工場自動化を支える企業のサービスを紹介します。

日本サポートシステム株式会社

URLhttps://jss1.jp/

日本サポートシステム株式会社は、関東最大級のロボットシステムインテグレーターです。各メーカーが開発したロボットを組み合わせ、生産工程や目的に合った自動化を提案します。
ロボットの装置設計や組立、保守メンテナンスだけではなく、工場で不要となった機器の買取や産業用ロボットの特別教育まで、工場自動化に関するトータルサポートを行っています。

株式会社日立産機システム

URLhttps://www.hitachi-ies.co.jp/

株式会社日立産機システムは、マーキングシステムやクレーン機器など工場関連の機器を製造するメーカーです。日立産機システムでは、IoT化や制御システムに特化したデジタルソリューションを提供しています。
IT情報端末をコンピューターで管理することにより、全体工程を見据えた情報・制御・管理面でのIoTシステムの構築が強みです。また、セキュリティや設備の点検やメンテナンスサービスも提供しています。
なお2022年4月付で同社のロボティクスソリューション事業は、株式会社日立オートメーションに移管されました。

オムロン株式会社

URLhttps://www.omron.com/jp/ja/

オムロン株式会社は、制御機器と制御システムを開発しているメーカーです。センサーを活用した制御機器が強みで、センサーやスイッチ部品を自社で製造するほか、センサーやカメラと相性のよいパラレルロボットやスカラロボットの開発も行っています。
また創業以来、20万点を超える制御機器を開発し、自動化に必要な機器をすべてラインナップしている唯一の企業で、機器をつなぐソフトウェアの開発にも力を入れています。

セイコーエプソン株式会社

URLhttps://www.epson.jp/products/robots/

セイコーエプソン株式会社は、プリンターやプロジェクターが有名ですが、繊細な動作を得意とするロボットの開発も行っているメーカーです。長年の製造現場で培った振動制御技術に加え、小型のジャイロセンサーを組み込むことで、高精度かつ高速作業が可能なロボットを提供しています。
また、機器導入の検討段階から保守メンテナンス・修理まで、充実したサポート体制が構築されています。

シャープ株式会社

URLhttps://jp.sharp/business/agv/

シャープ株式会社は、通信機器・電気機器・電子応用機器全般や部品の製造・販売を行うメーカーです。工場の自動化の分野では、生産ラインを一括して自動化するサービスのほか、貨物の自動搬送装置や作業者の業務を補助するツールまで多岐に開発を行っています。
また生産工場への導入実績が豊富な「自動搬送装置」に関しては、100台までの同時制御も可能な独自の集中制御システムをリリースしています。

株式会社FUJI

URLhttps://smt.fuji.co.jp/

株式会社FUJIは、大型の工作機械から複数のロボットが1つのシステムになったオールインワン装置まで、幅広い製品を提供する企業です。
多関節ロボットを搭載した「ロボセル」や基板組立に特化したユニット単位での実装機や挿入機により、低コスト・低スペースでの自動化を実現する製品を提供しています。

工場自動化のおすすめサービス一覧

工場自動化のおすすめ企業を一覧にまとめました。

企業 主な営業品目 特徴
日本サポートシステム株式会社 装置設計・製造組立 各メーカーのロボットを組み合わせた自動化システムの提案
株式会社日立産機システム デジタルソリューション 全体工程を見据えた情報・制御・管理システムを提供
オムロン株式会社
  • センサーやスイッチなどのパーツ
  • 産業用ロボット
多数機器を連結による生産工程の自動化
セイコーエプソン株式会社
  • 産業用ロボット
  • センサーシステム
制動技術により高性能・高速化を備えたロボットシステム
シャープ株式会社 自動搬送ソリューション さまざまな業界に合わせた自動搬送システム
株式会社FUJI 実装機や挿入機などのオールインワン装置 必要な自動作業が1つのセルで可能な装置システム

生産工程や製品により、工場に合った自動化は異なります。ぜひ自社工場に合ったサービスや企業を見つけてください。

まとめ

近年工場の自動化ニーズが高まっており、食品の製造ラインや医薬品の検査など、さまざまな工場で導入が進んでいます。
工場の自動化を進めれば、今回紹介した成功事例のように人件費削減や生産性向上といったメリットがありますが、高額な初期費用がかかるデメリットにも注意しなければなりません。
自社工場にあった自動化を進め、生産性の向上や人手不足の課題を解消しましょう。