産業用ロボットの種類を紹介!連携システムで市場ニーズも拡大

産業用ロボットを導入することで、作業が自動化し効率のよい生産が可能です。しかし効果的に運用するためには、ロボットの可動範囲や動作を確認し、製造ラインに合った機体を導入する必要があります。
この記事では、産業用ロボットの主な種類を詳しく紹介します。最後まで読めば、産業ロボットのトレンドを理解できます。産業用ロボットの導入を検討中の方は、ぜひご覧ください。

産業用ロボットとは

産業用ロボットとは、工場や生産現場で人間に代わり自動で作業する機械のことです.
加工・組立・搬入・搬出・仕分け・洗浄など、さまざまな業務に対応できるロボットが開発されています。
またJISにおいて、産業用ロボットは以下の定義とされています。

  • 自動制御されている
  • 再プログラム可能である
  • 多目的なマニピュレーター
  • 3つ以上の軸を持つ
  • 産業自動化の用途に用いられる

参照ロボット及びロボティックデバイス−産業用ロボットのための安全要求事項 / JIS

上記のうち、1つでも当てはまらない項目がある場合は、産業用ロボットとは呼べません。
産業用ロボットの理解を深めるために、「サービスロボット」との違いをこれから解説します。

サービスロボットとの違い

産業用ロボットとサービスロボットの違いは、導入用途と規格です。
サービスロボットは、用途も規格も使用する状況により異なります。そのため、産業用ロボットの規格に沿って作られたロボットでも、産業の用途として導入されなければサービスロボットと位置づけられます。

産業用ロボットの種類

産業用ロボットは、構造や特徴によって分けられます。ここでは、主な7種類のロボットと、そのほかの4種類のロボットを紹介します。
ロボットのさまざまな機能を確認し、自社工場に合った産業用ロボットを見つけましょう。

産業ロボット主な7種類

まずは、主な産業ロボットの7種類について解説していきます。

極座標型ロボット

極座標型ロボットは、砲台のような見た目で、1つのアームに加え、2つの回転軸と1つの直進運動軸を持つロボットです。台座の水平回転とアームの上下方向の振りで「作業方向」が定まり、アームの伸縮で「作業位置」が決まります。
アームの振りと伸縮により、アーム先端の姿勢が細かく変わるため、微細な調整が必要となります。

円筒座標型ロボット

円筒座標型ロボットは、1つのアームと1つ以上の回転軸・直進運動軸を持つロボットです。台座が旋回する動作により「作業方向」が定まり、アームの伸縮と上下運動で「作業位置」が決まります。
アーム先端の位置はアームの伸縮で定まるため、姿勢が斜めになることがなく比較的位置決めが簡単です。
また円筒座標型ロボットは回転軸が1軸程度しかなく、かつアームが上下の直線的な動きしかできないため、アームにおける姿勢の自由度は低めです。そのため、回り込み作業や障害物を回避するような、複雑な作業には向いていません。

直角座標型ロボット

直角座標型ロボットは、直角に交差した3つの直進運動軸で構成されるロボットです。「作業位置」は、直進運動軸の上下・左右方向のスライドで決まります。
動作は直進運動のみのため、回転が必要な作業はできません。ただし、回転運動軸の角度調整が必要になるロボットよりも、コントロールが効きやすく位置決めの精度が高いのが特徴的です。

垂直多関節型ロボット

垂直多関節型ロボットは、主に回転運動軸で構成されるロボットです。軸数は4~6軸のものが多く、アームの角度を細かく調整できます。また、裏側に回り込んで作業するような複雑な工程での使用を想定したロボットは、7軸で構成されることもあります。
垂直多関節ロボットは、軸が多く自由度の高い動きができる分、制御やメンテナンスには高い技術が必要です。

スカラロボット(水平多関節型ロボット)

スカラロボットは、水平に並んだ2つの回転軸と先端部分に上下方向の直進運動軸があるロボットです。回転軸により「作業方向」が決まり、直線運動軸により「作業位置」が定まります。
またスカラロボットは水平方向の動きに特化したロボットで「上から押し込む・取り付ける」動作は得意ですが、「ひねる」等の回転動作はできないため使用用途が限られます。

パラレルリンク型ロボット

パラレルリンク型ロボットは、UFOキャッチャーのクレーンような見た目で、アームに閉ループ構造を構成するリンクを持つロボットです。複数のリンクが連動し、「作業位置」が決まります。
パラレルリンク型ロボットの多くは天井からぶら下がるような形で設置され、コンベア上を流れる品物を拾い上げる作業に広く活用されています。一方で単純な構造ゆえに「可搬重量は1〜10kg」ほどで、重量がある品物のピッキングには向きません。
また、複数の並列リンクが先端でつながっています。そのため垂直方向や立体的な動作が難しく、複雑な加工や溶接現場での使用は向いていません。

直交ロボット(単軸ロボット)

単軸ロボットは、xyz軸のいずれかの方向に対して直線に動くロボットです。単軸ロボット単体では一方向に移動する機能しかなく細かい作業ができないため、主にワークの搬送に利用されます。
また単軸ロボット同士を組み合わせたり、ほかのロボットと連携したりすることが多いです。

その他の分類のロボット

ここでは、動作や機能を組み合わせることにより、より複雑な作業ができるロボットについて紹介します。

プレイバックロボット

プレイバックロボットとは、従業員が教示した作業工程を再現し、作業を繰り返し実行するロボットです。現在活用されている産業用ロボットの大半が、プレイバックロボットにあたります。
なお、従業員がプレイバックロボットの制御やメンテナンスを行うためには、特別教育を受け資格を得なければなりません。

協働ロボット

協働ロボットとは、人間と一緒に作業する目的で作られたロボットです。安全を考慮して設計され、安全柵を設けず従業員と同じ場所で作業ができます。ただし、従業員による補助が前提のロボットであるため、ロボット単体では与えられた作業を完遂するのが難しい場合もあります。
また、協働ロボットは小型で軽い機体が多く、広いスペースを必要としません。

双腕ロボット

双腕ロボットとは、2つのアームを持つロボットです。別々の動作を行う2つのアームでの作業を連携させ、より複雑な作業が可能です。双腕ロボットのアームは、垂直多関節型ロボットやスカラロボットでの実装が一般的です。
また最近では、カメラを搭載した双腕ロボットも登場し、人が視認して行っていた作業も代替できるようになってきました。

セル生産ロボット

セル生産ロボットとは、1つの工程だけではなく複数の工程を担うロボットです。「セル」と呼ばれる小単位の生産工程に導入され、セルごとに生産設定を変更できます。
ライン生産ロボットでは、別の作業に変更するたびにラインを止めて、パーツ交換や再プログラミングの必要がありました。一方でセル生産ロボットは複数のセルで生産を行うため、1つのセルの工程を止めている間も、ほかのセルでは生産を続けられます。

産業用ロボットの市場

産業用ロボットの市場規模は、年々広がっています。日本ロボット工業会のデータによると、2022年1〜3月のマニュピレータおよびロボットの生産実績は「59,081台」と、2年前と比較し「1.5倍」も伸びています。

参照マニピュレータ、ロボット統計 受注・生産・出荷(用途別)実績 / 日本ロボット工業会

では、なぜ産業用ロボットの市場が拡大しているのか、これから解説します。

なぜ産業用ロボットの市場が拡大しているのか

産業用ロボットの市場が拡大している理由は、人材不足をロボットで補充する必要性が高まっているからです。
すでに産業用ロボットを導入している企業においても、さらなる効率化や品質アップのために、最新技術を積んだ産業用ロボットに買い替える需要があります。

まとめ

産業用ロボットは、工場における人材不足を解消し、より効率的な生産を行うために年々需要が高まっています。ロボット導入により生産性を上げるためには、どのようなロボットを使うかがキーポイントです。
今回紹介した産業用ロボットの種類の違いを参考に自社に最適なロボットを導入し、工場生産の効率化を図りましょう。