搬送ロボットとは、倉庫や製造工場でものを搬送する役割を担うロボットです。
搬送ロボットを導入すれば、さまざまな効果が得られますが、設備投資費用がかかってしまいます。そのため、搬送ロボットの導入を悩んでいる方も多いでしょう。
そこで本記事では搬送ロボットの概要やおすすめのメーカー、導入事例について解説します。導入時の注意点も詳しく理解できるため、搬送ロボットを検討中の企業の皆さまは必見です。
目次
搬送ロボットとは
搬送ロボットとはものを搬送する役割を担うロボットで、ほとんどは産業用ロボットに分類されます。
物流倉庫で商品を運んだり、製造工場で部品を移動させたりと活躍の場はさまざまです。最近では病院や商業施設内でものを運ぶ、多用途の搬送ロボットも普及し始めています。
また、決められたルートに沿って搬送したり、自律走行が可能であったりと、搬送方式も多種多様にわたります。
搬送ロボットの市場
矢野経済研究所の調査によると、2021年度の国内における搬送ロボットの出荷台数は6,400台で、出荷金額は158億7,000万円でした。2020年から2021年にかけては、半導体不足の影響もあり市場規模の縮小が見られましたが、2022年以降は設備投資需要の高まりから増加する見通しです。
2025年度には出荷台数が9,950台、出荷金額は274億9,000万円まで増加すると予測されています。増加の背景として、少子高齢化による人手不足や設備投資需要の高まりが挙げられ、搬送ロボットの市場は成長が見込まれています。
参照AGV/AMR(搬送ロボット)市場に関する調査を実施(2022年)
おすすめ搬送ロボットメーカー10社
ひとくちに搬送ロボットといってもさまざまな種類や用途があるため、それぞれのメーカーが手掛けているロボットも多種多様なものになります。そこで、おすすめの搬送ロボットメーカーを10社紹介します。
ラピュタロボティクス株式会社
ラピュタロボティクス株式会社は、重労働や危険性が高い作業を搬送ロボットが担い、より創造性のある仕事に人間がチャレンジできる社会を目指しています。
「ラピュタ自動フォークリフト」や自律走行搬送ロボットの「ラピュタPA-AMR」が、代表的です。同社では、機器間の連携により物流工程の自動化を図っています。
株式会社マキテック
株式会社マキテックは、創立以来50年以上の歴史がある、業界トップクラスのシェアを誇る搬送機器メーカーです。
各種コンベアを主に取り扱っており、ローラコンベアの「RZシリーズ」や駆動コンベアの「KR チェーン駆動ローラコンベヤ」などがあります。そのほかにも、無人搬送機などの搬送ロボットの「Robot-V」を手掛けています。
村田機械株式会社
村田機械株式会社では、無人フォークリフトの「Premex SLX」や搬送台車システムの「RTN-X」、無人搬送車の「Premex」など、多彩な搬送ロボットを生産しています。これらを組み合わせ、生産物流や流通物流の生産性と品質向上の実現を目指しています。
また、顧客の要望に合わせて、最適な搬送ロボットをオーダーメイドしています。
日本電技株式会社
日本電技株式会社は、用途や設備に合った搬送ロボットを提案し、人材不足やヒューマンエラーの解消を目指しています。
同社では、決められたルートを走行する無人搬送車「AGV」や、障害物などを避けながら走行する自律走行搬送ロボット「AMR」を主に取り扱っています。
ヤマハ発動機株式会社
ヤマハ発動機株式会社はバイクやスクーターで有名ですが、コンベアなどの搬送ロボットも手掛けています。
ベルトコンベアに代わる「リニアコンベアモジュールLCMR200」で、リニアモーターによって高速で高精度な搬送を実現します。
株式会社ZMP
株式会社ZMPでは、デジタル技術を活用して変革を起こすデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいます。
同社の「Carriro」シリーズでは、フォークリフトタイプや牽引車タイプの搬送ロボットが提供され、倉庫の搬送の自動化に役立てられています。
川崎重工株式会社
川崎重工株式会社は搬送ロボット以外にも、あらゆる分野の産業用ロボットを手掛ける重工業メーカーです。ロボットの導入により、コストの削減や品質向上、生産効率のアップを目指しています。
なかでも、「ウェハ搬送ロボット」は世界トップシェアを誇る半導体搬送ロボットです。
三菱電機株式会社
三菱電機株式会社では、多用途搬送サービスロボットシステムを手掛けています。
例えば、カートの着脱が可能で、種類の異なる搬送物でも対応できる「多用途搬送サービスロボットシステムMELDY™」を提供しています。障害物を回避するためのセンサーを搭載しており、安全で効率よく搬送できます。
シナノケンシ株式会社
シナノケンシ株式会社では、製造現場に向けた自動搬送ロボットを取り扱っています。「AspinaAMR」は、1辺60センチと小回りの利くサイズで狭い通路でもスムーズに動けるため、作業者とのすれ違いが多く発生する狭い工場内でも導入しやすい搬送ロボットです。
また、要望に合わせて購入後のサポートプランを選べるため、初めて搬送ロボットを導入する場合にも安心です。
安川電機株式会社
安川電機株式会社ではIoTやAIの技術とロボットを融合させ、生産現場にイノベーションを生み出し、さまざまな産業用ロボットを手掛けています。
そのうちの1つとして、大気環境用と真空環境用の半導体搬送ロボットが含まれる「SEMISTARシリーズ」を取り扱っています。
搬送ロボットの導入事例5社
搬送ロボットを導入すれば、さまざまなメリットがあります。ここでは、搬送ロボットの導入事例を5社紹介します。
佐川グローバルロジスティクス株式会社
佐川グローバルロジスティクス株式会社は、物流倉庫内で働く作業スタッフの負担軽減をめざして搬送ロボットを導入しました。取り扱う物量の増加にともなう、人手不足と、シニア世代のスタッフに対する体力面での負担が課題でした。
そこで、ラピュタロボティクス株式会社の自律走行搬送ロボットである「ラピュタPA-AMR」を導入。導入前はピッキングしてから梱包場まで運んで梱包していたのに対し、導入後はピッキングが完了したものを搬送ロボットが梱包場まで運んでくれるようになったため、ピッキングと梱包の分業が可能になりました。
搬送ロボットの導入により、スタッフがピッキングか梱包のどちらかに集中できるようになり作業効率の向上に成功したうえに、搬送ロボットが代わりに離れたエリア間を移動してくれるためスタッフの体力負担も軽減できました。
ヤマト運輸株式会社
ヤマト運輸株式会社では、広大な敷地内で荷物の仕分けや移動、積み込みを行っており、荷物を積んだロールボックスパレットを人が運ぶ作業の負荷が課題でした。
そこで、ロールボックスパレットをそのままの状態で搬送できて、かつ柔軟にルート変更が可能な「CarriRo」の導入を決定。
導入の結果、ロールボックスを搬送するスタッフの負荷を大幅に軽減できました。
タカナシ乳業株式会社
タカナシ乳業株式会社では、容器に高圧ガスを充填(じゅうてん)する際、在庫管理装置から充填機までコンベアを2本設置して運んでいました。しかし、スペースが狭く作業員の動線確保ができないため、日本電技社の自動搬送ロボットを導入しました。
自動搬送ロボットであれば狭いスペースでも容器を運搬できるため、製造室内のレイアウトを柔軟に変更できます。これにより、スタッフの動線を確保できるようになりました。
長野計器株式会社
長野計器株式会社では、計測器の部品や完成品を人が台車で搬送していました。台車に載せられる量は少なく、1日に何度も広い工場内を往復していたのです。
搬送にかかる膨大な工数を減らすために、シナノケンシ社の自動搬送ロボットである「AspinaAMR」の導入を決めました。
導入後、搬送にかかる工数を大幅に減らすことに成功しました。また、スタッフが生産作業に専念できるようになり、ヒューマンエラーが減り、作業効率も上がったのです。
有限会社小林超硬研磨
有限会社小林超硬研磨では、約20キロもある重たい超硬合金を運搬する危険な作業が問題でした。また女性スタッフ従業員の増加にともない、女性スタッフが安心して働けるように作業環境を改善する必要もあったのです。
そこでシナノケンシ社の自動搬送ロボットである「AspinaAMR」の導入を検討し、超硬合金の重さに耐えられるよう、ロボットをカスタマイズしてもらい導入しました。これにより、人による運搬作業の時間を70%軽減でき、付加価値を生み出す生産作業に時間を割けるようになりました。
搬送ロボットを導入する際の注意点
搬送ロボットを導入する際の注意点は、どのような用途で使用するかを踏まえて、各ロボットの種類や性能を比較したうえで選ぶことです。搬送ロボットにはさまざまな種類があるため、自社のニーズに合わせた機能が備わっているものを選ばなければ、無駄になってしまう可能性もあります。
例えば、先程紹介した小林超硬研磨社では重量物の運搬ができる搬送ロボットが必要でした。しかし、超硬合金の重さに耐えられる搬送ロボットは少なく、ロボットメーカーにオーダーし、改良してもらっています。
ロボットの仕様変更や再購入の手間をなくすためにも、複数のロボットメーカーの見積もりを比べ、最適な搬送ロボットを選びましょう。
まとめ
搬送ロボットは、物流倉庫や製造工場などさまざまな分野で活躍しています。上手く活用すれば作業の効率化を図れ、人手不足の解消につながります。
自社の課題を解決するためにも、用途を明確にし各ロボットの性能をしっかりと比較したうえで導入を進めましょう。