溶接ロボットとは、溶接作業を代替できる産業用ロボットです。業務効率を向上させるために、溶接ロボットの導入を検討している事業者の方も多いでしょう。
そこで今回は、溶接ロボットの仕組みや市場、おすすめのロボットメーカーについてわかりやすく解説します。本記事を読めば、溶接ロボットの特徴を理解できるでしょう。溶接ロボットの導入を検討中の方は、ぜひご覧ください。
目次
溶接ロボットとは
溶接ロボットとは、人の手を借りずに自動的に溶接できる機能をもった機械です。必要なツールを導入し、作業や条件、順序などをティーチングすれば、溶接作業を行ってくれます。
近年は、少子高齢化による溶接技術の継承者不足が深刻になっているため、溶接ロボットの導入を検討している企業が増加傾向にあります。
溶接ロボットの仕組み・構造
溶接ロボットは、以下の3つの要素から構成されています。
- マニピュレーター
- コントローラー
- プログラミングペンダント
溶接ロボットは作業者からプログラミングペンダントへ入力された指示内容をもとに、接続先のコントローラーが処理し、処理情報をもとに本体であるマニピュレーターが動く仕組みです。
また、溶接ロボットを動かすためにプログラミングペンダントへ動作などを入力する行為は、ティーチングと呼ばれます。これから、溶接ロボットの構造について詳しく解説します。
マニピュレーター
マニピュレーターとは、溶接作業を実際にするアームです。マニピュレーターの先端には溶接加工トーチが装着されており、先端部分を交換すると多種多様な溶接ができます。
また、一般的に溶接ロボットは多関節構造のマニピュレーターで、人間のように溶接棒をさまざまな角度から動かせるため、溶接作業の微調整が可能です。
コントローラー
コントローラーとは、マニピュレーターを操作する制御装置です。機械の動作を制御するための基盤が納められたコントローラー部分と人間・機械が情報を伝達するための入出力装置で構成されています。
プログラミングペンダント
プログラミングペンダントとは、マニピュレーターに溶接の順序や条件、動作などを教えるための端末です。マニピュレーターの動作データの新規作成や変更、修正などができます。
溶接ロボットの市場
富山経済の報告内容によると、2022年時点で溶接ロボットは3,995億円もの市場シェアを持ち、クリーン搬送系・協働ロボットが1,000億円程度であることから、溶接ロボットの市場規模の大きさが見て取れます。
また、FORTUNE BUSINESS INSIGHTSによると、溶接ロボットの世界市場は2020年時点で54億2000万米ドルでしたが、2028年には97億6000米ドルにまで成長すると予測されています。この報告内容から、溶接ロボットの市場は世界的に見ても、安定して拡大し続けるといえるでしょう。
参照富士経済、FAロボット世界市場調査 2027年に2兆1718億円に 2022年の1.5倍に拡大 EVや半導体関連の設備投資増が追い風に
参照ロボット溶接市場
おすすめの溶接ロボットメーカー10選
おすすめの溶接ロボットメーカーを10社を紹介します。溶接ロボットの製造・販売をしているメーカーは数多く存在します。それぞれの会社が、どのようなロボットを製造・販売しているのかを参考にしてください。
株式会社神戸製鋼所
株式会社神戸製鋼所は、素材・機械・電力を3分野を主軸とする企業です。同社が開発した「鉄骨溶接ロボットシステム」は、タッチパネルを搭載した新型教示ペンダントで、ティーチング作業の負担を軽減できます。
KUKA
KUKAは、ドイツ・アウグスブルクに本社を構える産業ロボットなどの製造をしている企業です。同社の「KUKA ArcTech」は、6Dマウスを使用してティーチングを行うため、精密溶接でも的確に処理可能です。
株式会社ダイヘン
株式会社ダイヘンは、産業用ロボットや溶接機を提供する企業です。同社が開発した「コールドタンデム溶接システム」は溶接電流を上げずに溶融量を増やせるので、溶け落ちを防止したうえで溶接速度の向上が可能です。
株式会社安川電機
株式会社安川電機は、産業用ロボットを中心とした電気製品を取り扱う企業です。同社が開発した「MOTOMAN-Ar700」は干渉半径が小さく省スペースで動作できるため、小物部品溶接に適しています。
パナソニック コネクト株式会社
パナソニック コネクト株式会社は、MAG溶接機や多用途マニピュレーターなど溶接関連機器を幅広く扱う企業です。同社が開発した「TAWERS WGⅢ/WGHⅢ」は、「スーパーアクティブワイヤ溶接法」を採用しており、ワイヤの短絡と開放を確実に実施できるため、スパッタの抑制が可能です。
川崎重工業株式会社
川崎重工業株式会社は、産業用ロボットを製造している企業です。同社が開発した「BA006」は、最大1,445ミリまで届くうえに細かく動作できるアームを有するため、自動車の組み立てで活用されています。
株式会社不二越
株式会社不二越は、切削工具や産業ロボットの製造が強みの企業です。同社の「SRA100」は、最新のモータードライブ制御で最適化され、従来より15%も消費電力を減少できています。また、加速性と制振性を追求した軽量さやロボット作業のサイクルタイムを最短にしたことによって、高精度な溶接を実現できています。
ファナック株式会社
ファナック株式会社は、製造現場の稼働率向上を目的に産業用ロボットの開発を行う大手電機メーカーです。同社の溶接ロボットの「3DレーザースキャナLS3Di-A」は、3Dレーザースキャナをアーム先端に搭載し、500ミリ程度離れた場所からレーザー光を集光し、高速かつ高精度な溶接ができます。
日鉄溶接工業株式会社
日鉄溶接工業株式会社は、溶接材料・溶接機器の製造や販売をしている企業です。同社の溶接ロボット「NAVI-21MP」は、溶接線のティーチング時に位置などの変化値から溶接速度を自動で補正する機能や、施工条件を溶接中に修正できる機能があり、繊細な位置・溶接方法の調整が可能です。
ABB株式会社
ABB株式会社は、100ヵ国以上で産業用ロボット・協働ロボット事業を展開するスイスの企業です。同社が開発した「IRB 1600ID」は、ケーブルが上側アームの内部を通っており、ケーブルの損傷を最小限に抑えられるため、ロボットにかかるメンテナンス費用を節約できます。
溶接ロボットを選ぶ際の注意点
溶接ロボットを選ぶ際の注意点は、以下の3つです。
- 導入目的に沿った種類を選ぶ
- ロボットの本体価格だけではなくトータルの導入コストを考慮する
- 複数のロボットの性能を比較する
面積が大きい金属の溶接に最適な「スポット溶接ロボット」や、ステンレスやアルミを溶接できる「TIG溶接ロボット」など、それぞれ得意分野が異なります。したがって、目的に合わせて適切なロボットを選ぶとよいでしょう。
また、溶接ロボットの価格は幅広く、ロボット本体以外にも周辺機器やメンテナンス費用、人材育成費などがかかります。そのため本体価格だけではなく、導入に必要なトータル費用を考慮しましょう。
同じ溶接ロボットであっても、搭載されているセンサーやアームの種類が異なるため、性能が大きく異なります。そのため複数の溶接ロボットを比較し、自社が効率化させたい作業に最も合うロボットを選びましょう。
まとめ
溶接ロボットは、溶接作業を自動化できる産業用ロボットです。自動車などの産業機器の需要増加から、溶接ロボットの市場は今後も拡大していくと予想されています。
今回紹介した溶接ロボットのロボットメーカーを参考に、自社に合った溶接ロボットを導入しましょう。