日本が進める「ロボット新戦略」の要点5項目

平成27年、経済産業相は日本再興戦略の改定2014に掲げられた“ロボットによる新たな産業革命”の実現に向け、ロボット革命実現会議を開催し、その内容を「ロボット新戦略」として発表しました。

今回は「ロボット新戦略」の要点となる5項目を紹介します。

ロボット新戦略の要点

1 世界的なロボット技術の革新

現在日本は、産業用ロボットの年間出荷額、及び国内稼働台数ともに世界一の“ロボット大国”です。
また同時に、少子高齢化や老朽インフラ等、ロボットが期待される“課題先進国”でもあります。

一方欧米では、デジタル化・ネットワーク化を用いた新たな生産システムを国家成長の鍵として、ロボット技術の活用が期待されています。
そして、中国を始めとする新興国においてもロボット分野への積極的な投資が行われ始めているのです。

この様な世界的情勢に対し、日本は“ロボット大国”の名に懸け、データ駆動型の時代に於いても世界をリードすることを目的とし、「ロボット革命」を目標とすることを決定したのです。

ロボット革命の具体的な取り組みに関しては、平成26年9月から6回にわたり行われた有識者会議での議論を基にまとめられ、その名称を「ロボット新戦略」と名づけられました。

2 具体的な行動目標

ロボット新戦略では、ロボット革命を実現していくための目標として、3つの柱が掲げられました。

  1. 日本を世界のロボットイノベーション拠点とする「ロボット創出力の抜本強化」
  2. 世界一のロボット利活用社会を目指し、日本の津々浦々においてロボットがある日常を実現する「ロボットの活用・普及(ロボットショーケース化)」
  3. ロボットが相互に接続しデータを自律的に蓄積・活用することを前提としたビジネスを推進するためのルールや国際標準の獲得等に加え、さらに広範な分野への発展を目指す「世界を見据えたロボット革命の展開・発展」

3 ものづくりにおけるアクションプラン

大企業を中心に導入が進む「産業用ロボット」に関しては、労働生産性の停滞が不安視されています。
ロボット新戦略では具体的対策として、下記4項目が提示されました。

  1. 部品組立て・食品加工等の労働集約的製造業を中心にロボット導入を推進
  2. ロボット化が遅れている準備工程等のロボット導入に挑戦するとともに、IT等の活用によりロボットそのものを高度化
  3. ユーザー・メーカー間を繋ぐシステムインテグレーターを育成
  4. ロボットの標準モジュール化(ハード/ソフト)や、共通基盤(ロボットOS※基本ソフト等)を整備

上記対策により、2020年には組立プロセスにおけるロボット化率を含む下記項目の達成が見込まれているのです。

  • 大企業:25%増
  • 中小企業:10%増
  • 次世代のロボット活用ベストプラクティス:30例
  • 相互運用可能なハードウェア:1000製品以上
  • システムインテグレーター事業に関わる市場規模拡大

4 介護・医療におけるアクションプラン

高齢社会となっている日本では、介護職員数の確保が急務とされています。
また、現在介護職に従事している者の約7割が腰痛を患っている現状があり、労働環境の改善も深刻な問題となっているのです。

これに対し、ロボット新戦略では具体的なアクションプランが提示されました。

  • ベッドからの移し替え支援
  • 歩行支援
  • 排泄支援
  • 認知症 の方の見守り
  • 入浴支援

介護現場において大きな負担となっている上記5つの行身に関して、ロボットの開発・実用化・普及の後押しを行い、下記3項目の達成を行うとしています。

  1. 介護ロボットの国内市場規模を500億円に拡大
  2. 移乗介助などに介護ロボットを用いることで、介護者が腰痛を引き起こすリスク機会をゼロにすることを目指す
  3. 最新のロボット技術を活用した新しい介助方法などの意識改革を図る

また、医療分野においては、ロボットの売上高は増加しているものの、伸び率にはまだ増減があります。
手術支援ロボット等の医療機器を普及し、新医療機器の審査の迅速化を図ることで、ロボット技術を活用した医療関連機器の実用化支援を100件以上行うとの目標を設定しています。
※平成27年〜31年の5年間での目標値

5 インフラ・災害対応・建設におけるアクションプラン

インフラ・災害対応・建設に携わる就業者数の減少や高齢化により、近い将来日本では深刻な労働者不足が起こるとの予測が出されています。

この分野に対してのアクションプランが下記です。

  1. 建設現場の省力化、作業の自動化により、中長期的な担い手不足に対応
  2. インフラの目視点検等にロボットを活用することで、技術者による維持管理を効率化・高度化
  3. 災害調査ロボットによる被災状況把握の迅速化、土砂災 害現場等における無人化施工の施工効率向上

そして、2020年に実現する目標値が下記です。

  • 生産性向上や省力化に資する情報か施工技術の普及率3割
  • 国内の重要・老朽化インフラの20%はセンサー、ロボット、非破壊検査技術等の活用により点検・修復を効率化
  • 土砂崩落や火山等の過酷な災害現場においても有人施工とくらべて遜色ない施工効率を実現

2020年までに日本は急速に進化する

以上が、ロボと新戦略の要点となる5項目です。

東京オリンピックが開催される2020年は、日本にとって技術・サービスの進化を世界中へアピールするメモリアルイヤーとなるでしょう。

<参考サイト>
ロボット新戦略(ロボット革命実現会議とりまとめ)/経済産業省