昨今多くのロボットが活躍しています。
中でも「ロボットアーム」は古くから活躍し、急激な進化を遂げているロボットのひとつです。
今回は、これまでロボットアームが歩んできた進化の歴史に注目し、最新のロボットアーム技術について紹介します。
目次
ロボットアームとは
ロボットアームはその名の通り、人間の腕の様な形状の自由度が高いロボットです。
ロボットアームの関節部分を自由に制御することができることにより、3次元空間を活用して、様々なアームの動きを実現することができます。
ロボットアームが担う生産工程は、主に下記です。
- 工業製品の搬送
- 溶接
- 塗装
- 組立
幅広い用途で用いられており、戦後復興からスタートした“工業大国日本”の大きな労働力となっているのです。
また、このロボットアームは、現在最も活用されている産業用ロボットであり、自動車業界や電気電子業界を始め、食品・飲料業界の工場でも利用されています。
医療業界で注目されるロボットアームの技術
工業・産業界で活躍中のロボットアームの技術は、近年医療分野でも活用が進んでいます。
最も有名なロボットアームは「ダヴィンチ(da Vinci)」と呼ばれる外科手術用のシステムです。
医療改革を起こしたダヴィンチの技術
このダヴィンチは、1990年代にアメリカで開発され、1999年からIntuitive Surgical社より販売されています。
ダヴィンチは、従来の鏡視下手術に、ロボットアームの技術を活用したシステムです。
鏡視下手術と同様に患者の体に小さな穴を開けて行う、傷口が小さい低侵襲の手術でも用いることが可能です。
活用方法としては、患者の体に内視鏡カメラとロボットアームを挿入し、医師がモニターを見ながらロボットアームを操作して手術を行います。
ダヴィンチには3本のロボットアームが備わっており、それぞれのアームは人間の手以上の稼働領域を有し、医師のコントロールにより、指先のように細かい動きをロボットアームが実現させます。
この様な細かい制御ができる理由としては、医師が操作するコントローラに手先の震えなどを補正する“フィルター”が備わっており、フィルターを介した後の指令値がロボットアームへの指令となるためです。
このフィルターのおかげで人間よりも確実な手術をすることが出来るのです。
遠隔操作によりロボットアーム単体で手術を行う未来
現在ダヴィンチの活用は、医師と患者が同じ空間にいる環境で手術が行われますが、将来はさらなるネットワーク技術の向上が見込めますので、医師と患者がそれぞれ離れた場所にいる環境においても、遠隔で行われる手術が実現される可能性があります。
その他の活躍領域
ロボットアームの基本構造はシンプルであるため、近年では「教育用玩具」として販売が開始している製品も登場しています。
ロボットアームの組立てを通して「ロボットの仕組み」体感することができ、さらに組立てたロボットアームをパソコン制御することにより「プログラミング」を学べるのです。
2016年6月に行われた文部科学省の有識者会議では、2020年から全国の公立小学校でプログラミングの授業を必修化させようとの議論が行われました。
この様な社会的傾向も影響し、ロボットアーム等の製品は今後さらなる需要拡大が見込まれているのです。
急速に進化を遂げるロボットアーム
ロボットアームの要素技術はすでに確立されています。
今後は、このロボットアームの遠隔操作や、より柔軟で精密な制御の実現が期待されます。
国内のロボット市場は2035年に10兆円規模になると言われており、これは、ロボットアームをはじめとする産業用ロボットの市場の拡大に加え、医療、介護、福祉など、様々な分野へ技術が応用されるとされているためです。
ロボットアームはシンプルな構造のロボットですが、技術的には非常に奥が深い製品なのです。
様々な技術との融合により、画期的な新技術・サービスが誕生する日も近いのではないでしょうか。